Daringdaddy’s days

登山、トレイルランニング、キャンプ、ビール好き。ウェブベンチャーで働くお父さん。

オフィスの二酸化炭素濃度(CO2濃度)が、生産性や意思決定、眠気に影響するという話

職場で、午後に頭が回らなくなり激しい眠気に襲われる

あるとき、新しい職場環境に身を置く事になって以来、午後になると必ず激しい眠気やら、急激な思考レベルの低下に悩まされました。

それはもう今までに経験したことのないくらいの、極端なパフォーマンスの低下。逆らえないくらいの激しい眠気と集中力の低下。なんなんだこれは?!

 

疲れか、老化か、睡眠不足か、食事だろうということで、老化はどうにもできないけれども、睡眠と食事は本を読んだりして色々工夫してみた。

それでも目立った改善が見られないので、「もう年か。。。そうだよな。。。」と諦めかけていた。

 

二酸化炭素濃度の測定機器導入

その矢先。

職場のエンジニアが「netatmo」という二酸化炭素測定機器を会社にもってきてくれた。 

これは二酸化炭素濃度のみならず騒音なども測定してくれるというもの。

実際にこのようなグラフ形式でCO2濃度を可視化してくれる。

以下で確認できるように、人が会社に来はじめる9時前後を境に、二酸化炭素の濃度がどんどん濃くなっていくのが分かる。

さらにお昼前には1000を越えて、夕方には1500近くなってしまう勢いである。

(本記事の末尾に、Netatmoを含め二酸化炭素濃度の測定機器のリストがあるので、気になる人は参考にしてください)

f:id:daringdaddy:20180103155717p:plain

 

なんでもあのチームラボさんが、二酸化炭素濃度(酸素濃度)が業務パフォーマンスに影響を及ぼすという事で、このデバイスを使って測定し、オフィスの換気等の改善に取り組んでいるらしい。
元記事はこちらである。非常に面白いので読んで欲しい!

ch.nicovideo.jp

 

そして記事内にある症状の数々が自分とぴたり当てはまる・・・

> やたらと眠い

> 集中力がでない

> 空気が悪い

 

そしてこんな記述も(上記記事から引用):

<人体への影響>
1000ppm    思考力に影響し始める
2000ppm    眠気を感じる人が出てくる
3000ppm    肩こりや頭痛を感じる人が出てくる
3000ppm以上 集中力や意思決定に支障をきたす

研究者らによると、
「室内の二酸化炭素濃度が2500ppmや3000ppmに達したとしても決して健康に害があるわけではないが、集中力や意思決定に支障をきたす可能性があることは明らかになった」とのこと。

 

なるほど、自分の症状の原因とみてよさそうだ。

酸素が不足することによって高山病などの影響がある事は知っていたが、オフィス環境で実際に人体への影響があるとは全く知らなかった。

 

「二酸化炭素濃度が思考力に影響する」とは具体的にどういうこと?

しかし、「思考力に影響」と言っても、イマイチ具体的ではない。

こういう曖昧な情報ではなく、ついついソースを当たりたくなってしまう。

 

チームラボさんの記事の中に米ローレンス・バークレー国立研究所とニューヨーク州立大学の研究報告という記載があったので、元となった医療論文を探してみることにした。

 

すると、すぐに全米健康機関(NIH)の論文を発見したので、読んでみた。

Environmental Health Perspectives – Associations of Cognitive Function Scores with Carbon Dioxide, Ventilation, and Volatile Organic Compound Exposures in Office Workers: A Controlled Exposure Study of Green and Conventional Office Environments

 

まぁ、医療用語が多すぎて正直全部を理解したとはいえないのだが・・・

 

二酸化炭素の濃度が「950PPM」で、さらに「換気無し」のときの思考力を「1.00」としたときに、

・二酸化炭素が濃い状態(1400PPM)

・二酸化炭素濃度が薄く、理想的な環境(500〜600PPM)

・そして最初の状態のCO2濃度(950PPM)ながら、「換気あり」の状態

それぞれで、人間の認識能力にどのような影響があるのかを数値化した研究である。

 

要約したのが以下の表である。(翻訳は筆者による)

環境

★ベース

ちょっと濃い
&換気なし

ちょっと濃い
&換気あり
理想環境 かなり濃い
CO2濃度 950ppm 950ppm 500-
600ppm
1400ppm
全体 1.00 1.69 1.99 0.99
基礎活動
レベル
1.00 1.20 1.35 0.91
集中活動
レベル
1.00 1.68 1.44 0.85
タスクへの
順応
1.00 1.05 1.14 1.00
危機
対応
1.00 2.05 2.35 1.33
情報の
検索
1.00 1.11 1.10 1.08
情報の
活用
1.00 2.61 3.94 1.01
アプローチ
の幅
1.00 1.29 1.43 0.98
戦略 1.00 3.17 3.77 0.83


表の見方について解説しよう。

最初の行、つまり「環境」にあるのが、実験として用意された4つの状況である。
すなわち上記で説明したとおり、「ちょっと濃い二酸化炭素濃度でかつ換気していない環境」
の思考力を1として、他3パターンの環境との能力の違いを可視化したものだ。

 

では、以下にそれぞれについて見ていこう。

二酸化炭素濃度が人間の思考、認識能力に与える影響度 

表のなかで、最初にくるのは「全体」である。

これは全ての要素のまとめにあたるものなので、これが全体を説明しているもの。

 

環境 ちょっと濃い
&換気なし
ちょっと濃い
&換気あり
理想環境 かなり濃い
CO2濃度 950ppm 950ppm 500-
600ppm
1400ppm
全体 1.00 1.69 1.99 0.99

基準となる状態に対して、換気をしていればパフォーマンスが約1.7倍、理想環境であればパフォーマンスが約2倍になる。かなりインパクトのある数字だ。

また「かなり濃い」と基準状態が全然変わらないのは、「二酸化炭素濃度がそこまで濃くなくても、換気をしなければかなり濃い状態と同じである」という事だろう。

それだけ、二酸化炭素濃度対策においては換気が大事という事らしい。

 

応用活動レベルと集中活動レベルの解説

次にくるのが「応用活動レベル」「集中活動レベル」である。

  • 応用活動レベル:全体的な目標に向けて決定を下す能力
  • 集中活動レベル:目の前の状況に注意を払う能力
環境 ちょっと濃い
&換気なし
ちょっと濃い
&換気あり
理想環境 かなり濃い
CO2濃度 950ppm 950ppm 500-
600ppm
1400ppm
応用活動レベル 1.00 1.20 1.35 0.91
集中活動レベル 1.00 1.68 1.44 0.85

集中活動レベルの方が、二酸化炭素濃度が濃いと大きく落ち込み、また二酸化炭素が薄かったり換気があると大きく高まっている事が判る。

ここから言えるのは、「集中作業をするときほど、CO2が適切な場所でやるべき」ということだろう。

 

危機対応、情報の活用、戦略などの能力の解説

そしてさらに「タスクへの順応」から「戦略」までは、認識能力を因数分解したもの。

以下それぞれについて定義を解説すると

  • タスクへの順応:目の前のタスクの完了に向けた特定の決定を下す能力
  • 危機対応:緊急事態の下で計画し、準備を整え、そして戦略を立てる能力
  • 情報の検索:入手可能なさまざまな情報源から必要に応じて情報を収集する能力
  • 情報の活用:提供された情報と全体的な目標を達成するために収集された情報の両方を使用する能力
  • アプローチの幅:多面的に判断を下し、さまざまなオプションや機会を使って目標を達成する能力
  • 戦略:うまく情報を活用し企画された解決手段を使いこなす複雑な思考能力

となっている。以下がその結果だ。

 

環境 ちょっと濃い
&換気なし
ちょっと濃い
&換気あり
理想環境 かなり濃い
CO2濃度 950ppm 950ppm 500-
600ppm
1400ppm
タスクへの順応 1.00 1.05 1.14 1.00
危機
対応
1.00 2.05 2.35 1.33
情報の
検索
1.00 1.11 1.10 1.08
情報の
活用
1.00 2.61 3.94 1.01
アプローチの幅 1.00 1.29 1.43 0.98
戦略 1.00 3.17 3.77 0.83

 

CO2濃度に影響を受ける思考力の種類は異なる

ということが表からもわかる。具体的に見ていこう。

 

まず表をみてわかるのは、「基礎活動レベル」の1.35に比べて「集中活動レベル」1.44が、環境改善時のパフォーマンス向上幅が大きい。

環境 ちょっと濃い
&換気なし
ちょっと濃い
&換気あり
理想環境 かなり濃い
CO2濃度 950ppm 950ppm 500-
600ppm
1400ppm
基礎活動レベル 1.00 1.20 1.35 0.91
集中活動レベル 1.00 1.68 1.44 0.85

先にも述べたが、集中作業をするときほど、酸素濃度の濃い空間で作業する事が高い生産性に繋がるということ。

 

因数分解された能力別でも「情報の検索」「タスクへの適応」など比較的、集中力を要さなさそうなタスクはそれほどパフォーマンスに影響が見られない。

環境 ちょっと濃い
&換気なし
ちょっと濃い
&換気あり
理想環境 かなり濃い
CO2濃度 950ppm 950ppm 500-
600ppm
1400ppm
タスクへの順応 1.00 1.05 1.14 1.00
情報の
検索
1.00 1.11 1.10 1.08

「タスクへの適応」は950PPM換気無しに比べて1.14倍の向上、「情報の検索」は1.10倍の向上だ。いずれも「集中活動」の幅に比べると小さい。

 

一方で「情報の活用」「危機対応」「アプローチの幅」「戦略」など、思考を伴うものは1.4倍〜4倍近い向上!

「情報の活用」と「戦略」は4倍弱、「危機対応」も2.35倍以上の向上である。

環境 ちょっと濃い
&換気なし
ちょっと濃い
&換気あり
理想環境 かなり濃い
CO2濃度 950ppm 950ppm 500-
600ppm
1400ppm
危機
対応
1.00 2.05 2.35 1.33
情報の
活用
1.00 2.61 3.94 1.01
アプローチの幅 1.00 1.29 1.43 0.98
戦略 1.00 3.17 3.77 0.83

 

そして前述したように全体でも、理想環境であればほぼ2倍の向上となっている。

環境 ちょっと濃い
&換気なし
ちょっと濃い
&換気あり
理想環境 かなり濃い
CO2濃度 950ppm 950ppm 500-
600ppm
1400ppm
全体 1.00 1.69 1.99 0.99

 

二酸化炭素濃度の適切な管理でパフォーマンスは相当上がるはず

この実験結果の数字を見てみなさんはどう感じただろうか。

 

自分はこれをみたとき、大きな衝撃を受けました。

自分1人と思っていた午後のパフォーマンスの低さ問題が、日本・世界のいろいろな職場環境で、大規模で起きている可能性が高い事が、定量的な実験結果、数字でみられたので。

二酸化炭素濃度を理想的な状態にすれば、思考力が2倍、4倍になる - 凄まじいインパクトだ。

二酸化炭素濃度が濃いまま働くのって、ランニングにたとえれば10キロ、20キロの米袋を背負って走るようなものだ。

 

午後、昼食後の眠気に襲われる人も減る

そもそも二酸化炭素濃度が濃ければ、思考力云々以前に眠気が増大するもの。

眠ってたら思考も生産性もへったくれもありませんw

眠気に襲われて時間を無駄にしたり、本当に寝ちゃう人も減るのだ。

 

働き方改革などとも言われる世の中の流れのなかで、生産性向上のための施策として、かなり真剣に取り組む必要があると実感した。

 

CO2濃度の事は分かった・・・ただ論文そのものの信憑性は?

これらの実験データは、怪しい論文が元ではなく、ちゃんとアメリカの国立衛生研究所NIHのサイトに掲載された論文である。

 

論文の第三者評価機関「Altmetric」による論文スコアも200近くあり、評価の高い論文のようだ。

つまり信憑性はとても高そう。(専門家ではないのでこれ以上の事は読み取れません、ご容赦ください)

Altmetric – Associations of Cognitive Function Scores with Carbon Dioxide, Ventilation, and Volatile Organic Compound Exposures in Office Workers: A Controlled Exposure Study of Green and Conventional Office Environments.

 

職場のその後のCO2濃度に対する取り組み

ぼくはみんながくる前、朝早く出社して集中して仕事するのが昔から大好きだった。

ただ、集中できる理由の一つは酸素濃度の高さ(二酸化炭素濃度の低さ)だったのかもしれない。

 

このNetatmoによる測定を開始してから、オフィス内でも二酸化炭素濃度を一定数値以下に下げようという気運が高まり、いまでは換気がちょくちょくなされるようになって、高くても1000前後におさまるようになった。

以前は2000を越える事もあったので、大きな変化だ!

 

ちなみに換気の悪い部屋で、ドアを閉め切って寝るのも良くないらしく、朝起きることには1000近くになっていることもあるらしい!

 

仕事で勉強で、高い成果を出したい人が多くいるはず。

個人的に全くの盲点だった「二酸化炭素濃度」「酸素濃度」。

みなさんの職場でもこれに着目して、対策してみてはいかがでしょう?

 

二酸化炭素濃度の測定機器

Netatmoの他にこんなタイプの二酸化炭素濃度計があるようです。

10000円~15000円程度で買えるので、CO2濃度が測れれば良くてNetatmoさんほどのスペックが必要なければこちらの方がお勧めです。 

→Amazonで買うなら

→楽天で買うなら

 

こちらの機器は約1万円と、探した中では一番廉価でした。

→Amazonのみ

カスタム (CUSTOM) CO2モニター CO2-mini

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こちらは壁に掛けたりする使い方もできる機種です。

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[rakuten:mrpostman:16284193:detail]

 

 

うちの会社にあるのはNetatmo。

売り切れるケースがあるようです。。。

価格は25000〜28000円前後と高め。

Netatmoは二酸化炭素だけでなく騒音などもモニタリングしてくれます。

 

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ウェザーステーション Netatmo Weather Station 【並行輸入品】
 

→楽天で買うなら

 

以下は楽天だけで見つけたものですね。Amazonに比べると品揃えが豊富。

 

おすすめの二酸化炭素濃度計をご存知の方、ぜひコメントで教えてください。

おまけ:地球全体の二酸化炭素濃度の経年変化

ここまで、職場における生産性向上に特化して書いてきたものの、地球温暖化の原因となっているのも二酸化炭素濃度だ。

 

それって一体どうなっているのか、ついでに調べて見た。

 

二酸化炭素濃度の全球平均経年変化グラフ

それが上図である。(気象庁ホームページから引用)

やはりあがってます。

1985年には350PPM程度だったCO2濃度が、2015年には410PPM程度まで上昇。30年で60PPMあがっているので、大体1年に2〜3PPMずつくらい増えている。

2000年頃を境に、増加ペースがあがっているようだ。

 

もちろん地球のCO2問題は、オフィスの生産性といったスケールの話ではないが、地球全体でみても二酸化炭素濃度の問題は大きい事がわかる。

このまま濃度が高まり続ければ、外気の方が二酸化炭素濃度が高いなんていうSFな世界も絵空事として笑えないでしょう・・・。