- 予報アプリに月いくら払っても返ってこない一点:登山天気を常設・ヤマテンをハイシーズン・Windyを参考に
- 最初に覚えるなら5つでいい:かなとこ雲・積乱雲・高層雲・笠雲・巻積雲を「猶予の短い順」に
- 雲だけが手がかりではない:山小屋の夜と朝で、気圧の下がり方を見比べる
- 「調べる」と「思い出す」は別の作業:雲は調べているうちに形が変わっていく
- 雲の道具は「いつ」で3つに割れる:識別のくもろぐ・覚える雲奉行・読む観天望気の本
- 観天望気を学ぶ本は4冊で足りる:新書1冊から、辞書がわりの1冊まで
- 自作アプリ「山の雲名人」の中身:34項目・観天望気18・見分けペア28組
- 先に言っておく5つの限界:予兆は18項目・安全判定はしない・未収録が2つ・iPhone専用・無料枠は絶景寄り
- まとめ:次に谷から雲が上がってきたとき、名前が出てくるように
- 参考にした資料
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朝5時に予報を見て、午前は保つと読んだ。9時25分、白馬の大雪渓を登る途中で振り返ると、左の谷から雲がゆっくり這い上がってきていた。写真も撮っている。ただ、それが何という雲で、何を意味するのかは知らなかった。標高2,400mを越えたあたりで、ぽつぽつと雨が落ちてきた。
予報が外れたわけではない。予報が答えている問いと、山にいる自分が知りたいことが、少しずれていた。出発前に知りたいのは「明日はどうなるか」。稜線で知りたいのは「いま、目の前のこの空はどうなるか」。
山で空と付き合う道具は、大きく3つに割れる。その場で名前を調べる識別アプリ、これからを読む観天望気の本、そして事前に覚えておく学習アプリだ。順に見ていく。先に言っておくと、3つ目には僕が自分で作ったアプリが入る。つまり宣伝も混じる。そのぶん、できないことまで書く。
予報アプリに月いくら払っても返ってこない一点:登山天気を常設・ヤマテンをハイシーズン・Windyを参考に
出発前に見ているのは3つで、お金のかけ方も揃えていない。
tenki.jp 登山天気(日本気象協会)は常時課金している。三百名山+αの山について、山頂・登山口・ふもとを標高別に出してくれる。ライトプランが月額240円で3時間ごと・7日先まで、プレミアムが月額550円で1時間ごと・14日先まで(年間プランなら4,980円で月額415円相当)。年を通して山に行くなら、常設にしておくのはここだと思っている。
ヤマテンはハイシーズンだけ足す。月額550円(税込)で全国330山の山頂予報が届き、北アルプスや八ヶ岳、富士山など主要60山にはさらに詳しいスペシャル予報がつく。山岳気象に専門特化した気象会社が、予報士の言葉で書いた文章を出してくる。判断がシビアになる時期にだけ併用する使い方に落ち着いた。
Windyは参考程度に開く。無料で風・雨・雲を地図の上に面で描き、ヨーロッパとアメリカそれぞれの機関の計算結果(ECMWF・GFSなど)を無料のまま切り替えられる。両者が食い違っている日は「今日の予報は当てにしすぎないほうがいい」と分かる——ほぼその一点のために使っている。有料のPremiumは年額2,990円だが、この用途なら無料で足りる。
金を払ったぶん、返ってくるものはたしかに増えた。それでも3つに共通して返ってこないものがある。答えているのは「たぶんこうなる」で、答えていないのは「いま自分の頭の上にあるこの雲は、これから何をするのか」だ。予報は面と時間で世界を切っていて、そこに稜線から見上げている一人分の視野は入っていない。この問いに答えられるのは、その場にいる人間だけになる。
最初に覚えるなら5つでいい:かなとこ雲・積乱雲・高層雲・笠雲・巻積雲を「猶予の短い順」に
雲の分類は、気象庁が観測に使う十種雲形が土台になる。空を上層・中層・下層の3つに分け、そこに現れる雲を10種類に振り分ける整理だ。上層が巻雲・巻積雲・巻層雲、中層が高積雲・高層雲・乱層雲、下層が層雲・層積雲・積雲・積乱雲。名前に「巻」が付けば高い空、「高」が付けば中くらい、「乱」が付けば雨を降らせる雲、と読める。
ただ、10種を全部覚えてから山に行く必要はない。行動が変わるものから入ればいい。日本の夏山で、見えた時点で足の運びが変わるのは、だいたい次の5つに集まる。残された時間が短い順に並べた。
| 見えたもの | 見分けの決め手 | 言われていること | 猶予の感覚 |
|---|---|---|---|
| かなとこ雲 | 上端が凍って横へ平らに広がっている | すでに雷雨の段階。突風や降雹に警戒 | ほぼ無い |
| 積乱雲(入道雲) | 頂が丸く盛り上がって伸びている=まだ育っている | 午後に急に育つと雷雨や突風になる | 短い |
| 高層雲(おぼろ雲) | 空全体が薄く灰色に覆われ、太陽がすりガラス越しに見える | 厚みを増すと、やがて雨になることが多い | 数時間 |
| 笠雲・レンズ雲 | 輪郭が滑らかで、山頂に張り付くか宙に浮く | 上空が湿った強風。下り坂の前触れとされる | 半日から1日 |
| 巻積雲(うろこ雲) | 高い空に、陰影のない細かい白い粒がうろこ状に | 空一面に広がると天気は下り坂に向かう | 半日から数日 |
上の2つは「もう起きている」、下の3つは「そろそろ来る」だ。巻積雲を見た朝にはまだ計画を早める余地があり、かなとこ雲を見上げたときには余地がない。どれくらい猶予が残っているか——名前を覚える実利は、たぶんここにある。
ただし右端の「猶予」は、時計で測れる数字ではない。観天望気は昔から山で言われてきたことの集積で、外れる。それでも価値があるのは、予報が「明日の全体」しか答えないのに対して、これは「いま自分の頭上」に紐づいているからだ。当たるか外れるかではなく、判断の材料が1つ増えるかどうかの話になる。
かなとこ雲について、ひとつ補足しておきたい。あの平らな頭は、積乱雲が上へ伸びきって天井にぶつかり、上層の風に流されてできる。だからかなとこが張り出している先が、その高度で風が吹いていく方向になる。雷雲がそちらへ動く目安にはなるが、下層の風とは向きが違うこともあるので、方角の当てにしすぎは禁物だ。かなとこが見えた時点でやることは、方角の推理より先に、稜線・岩場・開けた鞍部から離れることになる。
→ 午後の雷をどこで切り上げ、どこへ逃げるかの判断基準を読む
山にしか出ない雲がある:笠雲・滝雲・雲海は十種雲形の外側
十種雲形だけを覚えて山に立つと、目の前のいちばんはっきりした雲に名前がつけられない、ということが普通に起こる。山には、地形が作る雲があるからだ。
笠雲は、山頂に笠をかぶせたように張り付くレンズ状の雲だ。湿った空気が山にぶつかって持ち上げられ、山頂付近で冷えて雲になり、風下でまた降りて消える——その定常的な流れの中で生まれる。じっと動かないように見えて、実際は生まれては消えを絶え間なく繰り返している。
滝雲は、稜線を越えた雲が谷側へ滝のように流れ落ちるもの。雲海もそうだ。どちらも平地の雲形分類には出てこない。地形と高さがそろって初めて成立する、山の側の現象だからだ。
そして山で判断を左右するのは、たいていこちら側の雲だったりする。
雲だけが手がかりではない:山小屋の夜と朝で、気圧の下がり方を見比べる
空を読む手がかりは、目で見える雲だけではない。
高さが上がれば気圧は下がる。大気の低いところなら、おおよそ10m上がるごとに1hPaという割合だ。裏を返せば、同じ場所に留まっているのに気圧が下がっていくなら、動いているのは自分ではなく気圧配置のほうということになる。山小屋やテント場に泊まる日、夜と翌朝で数値を見比べる。下がっていれば下り坂、上がっていれば回復傾向。雲を読むのと同じ判断を、別の入口からやっていることになる。
iPhoneにも気圧センサーが入っているので、対応アプリを入れれば数値そのものは取れる。ただし知りたいのは「前より下がったか」であって、いまの値そのものではない。要るのは推移だ。ここで手首の道具が効いてくる。
カシオのプロトレックは、この用途にいちばん素直な作りをしている。過去42時間の気圧傾向をグラフで持っていて、特徴的な変化が起きると矢印と報音で知らせる。42時間あれば、前夜のテント場から翌朝の稜線までがそのまま1枚に収まる。地図もGPSも積んでいないかわりに54gで、電源はソーラーだ。
すでにGPSウォッチを使っているなら、気圧計はたいてい最初から載っている。ガーミンのInstinctシリーズなら、気圧の変化率がしきい値を超えるとストームアラートが鳴る。買い足す話というより、手首にある機能を一つ思い出す話だ。
→ 日本の登山アプリと電池もちで選ぶスマートウォッチの比較を読む
「調べる」と「思い出す」は別の作業:雲は調べているうちに形が変わっていく
ここまでの5つ+αは、読めば「なるほど」と思う。問題は、次に山で空を見上げたときに出てくるかどうかだ。
高山植物で同じことを考えたときに行き着いたのは、答えを見ることと思い出すことは頭の使い方が別だ、という当たり前の話だった。辞書を引くのと単語帳をめくるのの違いで、名前を自分の中から引っぱり出す練習をしないかぎり定着しない。
雲では、これがもう一段きつくなる。
花は逃げない。写真を撮って、家で調べて、次に会ったときに答え合わせができる。雲は数分で形が変わる。撮って調べているあいだに、判断したかったその雲はもう別の姿になっている。しかも空は広い。「どれのこと?」が起きやすく、識別アプリに撮らせるにも切り取り方が要る。
そして決定的なのは、雲を見る目的が名前ではないことだ。花は名前が分かれば用が済む。雲は名前が分かったところで、それが何の前触れかを知らなければ行動は変わらない。現場で必要なのは検索ではなく、すでに知っていることになる。
答えと見分け方を見る
雲の道具は「いつ」で3つに割れる:識別のくもろぐ・覚える雲奉行・読む観天望気の本
雲を扱う道具を「無料か有料か」「何種類収録か」で並べても、どれを入れるべきかは決まらない。効くのは時間軸だ。その道具は、いつの判断を助けるのか。
| 道具 | 費用 | 答えるもの | 時間軸 | App Storeの評価 |
|---|---|---|---|---|
| tenki.jp 登山天気 | 月¥240/¥550(年¥4,980) | 三百名山+αの山頂・登山口・ふもとを標高別に | 出発前 | ★3.8(1,830件) |
| ヤマテン | 月¥550 | 全国330山の山頂予報(60山は詳細版) | 出発前 | — |
| Windy | 無料/Premium 年¥2,990 | 複数モデルの風・雨・雲を面で表示 | 出発前 | ★4.6(5.3万件) |
| くもろぐ | 無料 | 撮った雲をAIが判定(十種雲形) | いま | ★4.2(38件) |
| 観天望気の本 | ¥1,100〜 | 雲の変化が何の前触れかの解説 | これから | — |
| 雲奉行 | 無料 | 雲20種の4択クイズ(イラスト出題) | 事前 | ★3.5(64件) |
| 山の雲名人(自作) | 無料+買い切り課金1つ | 34項目の写真クイズ、うち18に観天望気 | 事前 | 評価なし(公開2週間) |
「いま」の枠は、くもろぐがほぼ一手に引き受けている。撮った雲の写真をAIの「KMOMY(くもみ)」が判定し、十種雲形を返してくれる。スカパーJSATがバニヤン・パートナーズと神戸大学と組んで開発したもので、判定精度はストアの説明文で「85%程度(自社調べ)」とされている。無料。最終更新は2024年8月だ。
「事前」の枠には雲奉行がいる。4択で雲の名前を当てる無料の学習アプリで、収録は20種。十種雲形と有名な雲を20個、手早く一周したいだけならこれで足りるし、実際ユーザーもついている。イラスト出題なので、実物の写真で当てる練習にはならない——そこが分かれ目になる。
空いているのは「これから」だ。ここを埋めてきたのは、いまのところアプリではなく本だった。
観天望気を学ぶ本は4冊で足りる:新書1冊から、辞書がわりの1冊まで
山岳気象の分野は、書き手が絞られているぶん定番がはっきりしていて、迷いにくい。役割で選べばいい。
いちばん薄くていちばん安いのが、ヤマケイ新書の『山の観天望気』。新書判144ページで、観天望気の基本から悪天を知らせる雲、気象リスク対策までを扱う。著者はヤマテンを率いる猪熊隆之と海保芽生。「まず雲を手がかりにする」という一点に絞られているので、この記事の続きとしていちばん自然に読める。
もう一段しっかり学ぶなら『ヤマケイ登山学校 山の天気入門』。雲の変化から読む話に加えて、登山者向けの天気図の読み方まで章立てで入る。図解が多く、新書より腰を据えて読む一冊だ。2026年6月に出たばかりで、内容も新しい。
辞書として置いておくなら『山岳気象大全』。500点を超える図表で、基礎から衛星画像の読み方、季節別・山域別の気象までを一冊に収めたA5判320ページだ。通読する本ではなく、疑問が出たときに開く本になる。刊行から時間が経っていてAmazonの在庫は薄いので、無ければ楽天や書店を当たったほうが早い。
雲そのものを引きたいなら、登山の本ではなく雲の図鑑になる。『新・雲のカタログ』は、世界気象機関の分類に沿って空の雲を全種で並べた図鑑だ。2017年に分類が改訂されてアスペリタスなどが加わったのを受けた改訂版で、写真もほぼ全面的に入れ替わっている。山向けに書かれてはいないので山岳特有の雲は手薄だが、そのぶん変わった雲に出会ったときの守備範囲が広い。
本の弱点は、山に持っていけないことだ。正確には持っていけるが、雲が形を変えているあいだにザックを下ろして本を開く人はいない。家で読むものになる。
自作アプリ「山の雲名人」の中身:34項目・観天望気18・見分けペア28組
ここからは自分で作ったものの話なので、割り引いて読んでほしい。
山の雲名人は、写真から雲の名前を当てるクイズ形式のiOSアプリだ。本体は無料で、全34項目を解放したい場合だけ買い切りの追加課金が1つ。月額のサブスクにしなかったのは、雲の数が毎月増える類のものではないからだ。広告もない。写真もデータもアプリの中に入れてあるので、電波が届かない稜線でも全機能が動く。
収録は34項目。内訳はこうなっている。
- 十種雲形 10(巻雲・巻積雲・巻層雲・高積雲・高層雲・乱層雲・層雲・層積雲・積雲・積乱雲)
- 十種雲形の仲間 8(かなとこ雲・雄大積雲・アーチ雲・波状雲・乳房雲・尾流雲・アスペリタス・飛行機雲)
- 大気光学現象 10(日暈・彩雲・幻日・光環・太陽柱・環天頂アーク・薄明光線・虹・朝焼け夕焼け・ブロッケン現象)
- 山岳特有 6(笠雲・レンズ雲・滝雲・雲海・谷霧朝霧・影の山)
34すべてに「山ではこう読む」を書いた。そのうち天気の前触れとして意味を持つのは18項目で、残りの16には予兆を書いていない。
さらにその18を、シグナルの強さで3段階に分けてある。
- 強い(3項目):積乱雲・かなとこ雲・アーチ雲。もう起きている、あるいは直後に来る
- 中くらい(5項目):日暈・雄大積雲・巻層雲・乳房雲・高層雲
- 弱い(10項目):笠雲・巻雲・巻積雲・高積雲・レンズ雲・積雲・幻日・虹・飛行機雲・朝焼け夕焼け
もう一つの柱が、まちがえたときの画面だ。選んだ雲と正解の雲を上下に並べ、写真つきで「どこが違うのか」を出す。似ている雲どうしは組にしてあって(34項目で28組)、誤答の選択肢はそこから優先して出る。つまり、まちがえやすい相手と当たるようにしてある。
写真については、山そのものが画面に写る項目——雲海・滝雲・笠雲・影の山・谷霧——には、日本の山の写真しか使わないと決めた。積乱雲や日暈のように空だけが写る現象は世界中どこで撮っても同じものなので、こちらは国を問わず良い写真を選んでいる。日本縛りをかけた側では、この線を引いた結果、入れられていない項目が2つ出た。次の節に書く。
先に言っておく5つの限界:予兆は18項目・安全判定はしない・未収録が2つ・iPhone専用・無料枠は絶景寄り
1. 予兆が付くのは18項目で、残り16には書いていない。 ここは能力ではなく方針の話で、次の2につながる。「34種類の雲で天気が読める」ではなく、「34のうち18が判断に効く」が正確なところだ。
2. 「この雲なら大丈夫」は言わない。 危ない側は書くが、安全だという判断は返さない。だから雲海や朝焼けのような好天側のサインも、意図的に予兆として載せていない(「朝霧は晴れ」のような言い伝えは昔からあるのに、だ)。アプリの中にも「観天望気は目安です。実際の行動判断は気象情報と現地の状況で行ってください」と入れてある。安心が欲しい人には物足りないはずで、それは意図してそうしている。
3. 吊るし雲と旗雲が入っていない。 どちらも山では有名な雲なのに、まだ収録できていない。理由は写真だ。前節に書いた「日本の山の写真しか使わない」という線に合う写真が、吊るし雲はどれだけ探しても見つからず、旗雲は海外の山のものしか無かった。自分で撮れたら入れる。要するに未完成の穴で、基準の潔さの話ではない。
4. iOSのみ。 Androidには出していない。
5. 無料の11項目は「絶景寄り」に振れている。 無料で遊べるのは雲海・滝雲・笠雲・ブロッケン現象・彩雲・日暈・影の山・積乱雲・かなとこ雲・巻雲・朝焼け夕焼けの11で、このうち観天望気が付くのは6つ。残りの5つは山の絶景側だ。天気判断で効いてくるレンズ雲・巻積雲・高積雲・アーチ雲は、課金の向こう側にある。無料の範囲だけで天気が読めるようにはなっていない。
そして、これは限界というより性質の話だが、覚えるのは遅い。撮って1秒で答えが出る道具に比べれば、まどろっこしいことこの上ない。速さが欲しいならくもろぐのほうが向いている。
まとめ:次に谷から雲が上がってきたとき、名前が出てくるように
まずは予報で決める。登山天気で行くかどうかと時間帯を絞り、シビアな時期にはヤマテンを足し、Windyでモデルの食い違いを見る。ここは今のところ、個人が目で見て代わりにできる作業ではない。金を払う価値も十分ある。
足りないのは、そのあとだ。予報は「たぶんこうなる」までしか答えず、稜線に立った自分が見上げている空については何も言わない。そこから先は、見えているものに名前をつけられるかどうかで決まる。名前がつけば、それが何の前触れかを思い出せる。思い出せれば、行動を早める判断ができる。
白馬の写真をいま見返すと、谷から這い上がってきていたのは、斜面に沿って湿った空気が持ち上げられ、冷えて雲になったものだ。山で「ガス」と呼んでいる層雲が生まれていく途中の姿に近い。実際、その日は昼過ぎからガスに巻かれて、視界は10mか20mまで縮んだ。9時25分の時点で読めていたら、大雪渓を抜けるペースを少し上げていたと思う。目には映っていた。読めなかっただけだ。
次の山では、そこを一つ埋めておきたい。
→ 予報を見て南アルプスから白馬へ振り替えた1泊2日の記録を読む
参考にした資料
- 気象庁 沖縄気象台「雲の観測」(十種雲形の分類・雲量の定義)
- 日本気象協会「tenki.jp 登山天気」(対象の山・プラン別の料金と予報の刻み)
- 株式会社ヤマテン「山の天気予報」(対象山域・料金)
- Windy.com(App Store 日本版の価格・評価)
- くもろぐ(App Store 日本版の説明文・評価)、神戸大学ニュースリリース
- 雲奉行(App Store 日本版の説明文・評価)
- 猪熊隆之・海保芽生『ヤマケイ新書 山の観天望気』山と溪谷社、2020年
- 村井昭夫・鵜山義晃『新・雲のカタログ 空がわかる全種分類図鑑』草思社、2022年
- 気象衛星センター「かなとこ巻雲」(積乱雲から風下側へ伸びる性質)
- カシオ「PRO TREK PRG-340-3JF」仕様(気圧傾向グラフ42時間・気圧傾向インフォメーションアラーム・質量)
- ガーミン「Instinct 3 Series Owner's Manual」(Storm Alert の設定)
記事内のアプリ画面のうち、出題画面に写っている雲海は筆者撮影です。詳細画面の積乱雲=Famartin / CC BY-SA 4.0、誤答画面の笠雲=Alpsdake / CC0・レンズ雲=Hannes Grobe / CC BY-SA 4.0、いずれも Wikimedia Commons。同画面に小さく並ぶ「似ている雲」のサムネイルを含め、アプリ内では全項目の撮影者とライセンスをクレジット画面に掲載しています。