- 1. はじめに:LITEWAYのことを、もっと早く知りたかった
- 2. 「軽さは、あなたの中にある」——創業者Evgenが8年かけて辿り着いた場所
- 3. 毎日、空襲警報が鳴る街でミシンを踏む
- 4. 素材と構造への、偏執的なまでの誠実さ
- 5. 僕が唸った代表作
- 6. おわりに:「戦火」という重さを背負いながら作られるもの

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1. はじめに:LITEWAYのことを、もっと早く知りたかった
ピラミッドシェルターを探していたとき、LITEWAYの名前は何度も視界をかすめていた。
Mountain Laurel Designs、Six Moon Designs、Durston——そういった定番どころと並んで、Redditのスレッドに何度か登場する見慣れないブランド。「ウクライナのメーカーだよ」「品質は本物、ただし届くまで時間がかかる」「Evgenは対応が丁寧だ」。そういうコメントと一緒に。
気になりながらも、情勢への遠慮みたいなものがあって、なんとなく調べきれずにいた。でも実際に深掘りしてみて、今は後悔している。もっと早く知るべきだったと。
LITEWAYは2019年に公式ブランドとして立ち上がった、ウクライナ発のULギアメーカーだ。本拠地はウクライナ中部の工業都市、クリヴィー・リー(Kryvyi Rih)。ゼレンスキー大統領の出身地としても知られるこの街は、18世紀から続く鉄鉱石と重工業の街でもある。その重さと、彼らが作る「極限の軽さ」との対比が、どこか詩的で好きだ。
2. 「軽さは、あなたの中にある」——創業者Evgenが8年かけて辿り着いた場所
創業者のEvgenが山を歩き始めたのは2011年のことだ。
当時すでにULスタイルにハマっていた彼は、市販の道具に満足できず、自分でテントや寝袋、レインポンチョを試作し始める。8年間、歩きながら使い、直し、また作る繰り返し。2019年、その積み重ねが「LITEWAY」という名前を持って世界に出た。
「Elementum」というバックパックの名前はラテン語で「基本」「始まり」を意味する。スローガンは「Lightness is where you are」——軽さとは、あなたがいる場所にある。
このスローガンについて、LITEWAYはこんな説明をしている。
歌い、踊り、創造し、人生を楽しみたいと感じるとき。蝶のように羽ばたきたいと思うとき。心の中に激しさ、温かさ、光、愛があるとき——そこに軽さがある。
ULギアの文脈でここまで語るブランドは、あまり記憶にない。荷物の重さと、心の重さを同じ言葉で語ろうとしている。
3. 毎日、空襲警報が鳴る街でミシンを踏む
2022年2月、ロシアによる侵攻が始まった。
クリヴィー・リーはその日から今日まで、継続的に攻撃を受けてきた。Wikipediaが記録するだけで2022年から2025年にかけて15件以上の主要な攻撃。2025年4月の攻撃では死者19名、負傷者72名が出た。2022年9月にはダムへのミサイル攻撃で川の水位が1〜2m上昇し、数千人が断水状態に陥った。これは「紛争地域」という概念から連想される何かではなく、現在進行形の日常だ。
そのクリヴィー・リーで、LITEWAYは生産を止めていない。
自社の縫製アトリエに加え、地元の3つのパートナー工場と連携し、テント・バックパック・キルトをすべてウクライナの職人が手縫いで作り続けている。海外の海外レビュアーが実際にシェルターを手に取り、こう記録している——「縫い目に遊びが一本もない。ステッチは完璧だ(not a single loose thread, stitching is flawless)」。
さらにLITEWAYは、売上の一部をウクライナの破壊された街への人道支援・医療援助に充てている。製造を続けることで地元の職人に安定した収入を届け、そこから得た利益で被害を受けた人々を支援する——それはもはやビジネスの話ではなく、戦時下で企業が選んだ存在証明の話だ。
台湾の販売者がこう書いている。「実際の紛争地域からの発送のため到着に時間がかかります。でも、ウクライナの企業を支援できることは素晴らしい」。ユーザーはそれを知って注文している。
そんな状況下で、LITEWAYはゼロウェイストの裁断、再生PETボトル繊維のテント生地、リサイクル素材のパッケージ、再生紙のタグといった環境配慮を一切妥協していない。「Love mountains and forests, love the earth」——国土が破壊されていく中でこのスローガンを掲げ続けることの意味を、軽く見るつもりにはなれない。
4. 素材と構造への、偏執的なまでの誠実さ
Silpolyを全面採用した理由
LITEWAYのピラミッドシェルター「PyraOmm」シリーズのメイン生地は1.1oz Silpoly 20D Ripstop(耐水圧2000mm)だ。
ピラミッドシェルターの従来の主流素材はシルナイロン。引張強度に優れ、強風を「伸び」で吸収するショックアブソーバー特性を持つ。ただし致命的な欠点がある——ナイロンは水分を吸って伸びる。夜の雨で3〜4%膨張し、せっかく張ったシェルターが弛む。深夜に寝袋から出てペグを締め直す羽目になる、あの不快な体験だ。
対してシルポリ(ポリエステル)は疎水性で、水分吸収率は約0.4%。雨の夜でも張力が落ちない。朝までドラムのように張ったままだ。さらにUV耐性でシルナイロンより優れており、高所での長期運用でも劣化が遅い。
ただし弱点もある——初期の引張強度がナイロンより劣り、急激な風の衝撃をそのまま受け止めてしまう。
LITEWAYの回答がカテナリーカット(懸垂曲線カット)だ。各パネルの稜線を吊り橋のケーブルが描く自然な曲線で裁断し縫製することで、ペグアウト時に全面へ均一なテンションが発生する。風のバタつきを空気力学的に抑え、局所的な応力集中を分散させる。そしてポールが突き上げるピーク部分には、ヨット帆から発展したX-Pac素材を配置してピンポイント補強。ジッパーはYKK AquaGuard #3(止水仕様)、ガイラインはUHMWPE(超高分子量ポリエチレン)コード。
素材の弱点を構造設計で打ち消す——この思考回路が好きだ。
Ultra 200X:軽さと強さのトレードオフを壊した素材
バックパックの最上位ラインに採用している「Ultra 200X(Challenge UltraWeave)」は、表面にUHMWPE繊維を66%以上織り込んだ生地だ。同重量の鉄の15倍の引張強度を持ち、標準的な420Dナイロンの2倍以上の耐摩耗性。それでいて軽い。
一方でEcopak EPX200(100%リサイクルポリエステル)やUltraGrid(工業廃棄物由来リサイクルナイロン)も選択肢として用意し、用途と予算に応じて使い分けられるようになっている。環境負荷への視点が素材選択にも一貫している。
5. 僕が唸った代表作
PyraOmm Tarp シリーズ
| モデル | 重量 | 定員 | サイズ | 価格 |
|---|---|---|---|---|
| PyraOmm Solo Tarp | 360g(405g) | 1人 | 276×120cm / H120cm | €199 |
| PyraOmm Duo Tarp | 425g(485g) | 2人 | 272×164cm / H130cm | €259 |
括弧内はガイライン・スタッフサック込みの重量。
ソロタープ360gは、1人用ピラミッドシェルターとしてかなり軽量な部類だ。素材はシルポリ20D、止水YKKジッパー、X-Pacピーク補強、UHMWPEガイライン——この価格(約3.2万円相当)でこの仕様は誠実だと思う。
Duoは2つの出入り口(デュアルドア)を備え、ソロより居住性が格段に上がる。Full MeshまたはHalf Meshのインナーを組み合わせることでダブルウォール化できる設計で、虫対策や結露対策も対応できる。
Elementum Pack 50L
フレームレスでありながら12kgの耐荷重を持つ、矛盾みたいなバックパックだ。
秘密は台形(トラペゾイド)ボディにある。底部を最も広く取り、上に向かって先細りにする形状が、重いギアを自然と底部・背中寄りに収める。重心が腰椎付近に固定されるため、肩への集中荷重を抑えられる。フレームなしでも担ぎやすい理由が構造に組み込まれている。
容量はメイン37L+外部ポケット合計13Lで実質50L。ロールトップで無段階調整可能。Ecopak版665g、UltraGrid版565g(いずれもスタッフサックなし)。価格は€249(約4万円相当)。
Sleeper Quilt / Simple Quilt
LITEWAYのキルトは大きく2タイプ。フットボックス付きの「Sleeper Quilt」と、オーソドックスなトップキルト「Simple Quilt」。充填材は870FP国産グースダウン版と、Climashield Apex(化繊)版がある。
特に化繊のApex版は、湿気に強い特性が魅力だ。Climashield Apexは連続フィラメント構造でバッフルによる縫い目がなく、コールドスポットが生じない。濡れても保温力を維持し続ける。日本の北アルプスや沢沿いのキャンプでも心強い選択肢になる。
Sleeper Quilt Apex: €225(+4℃〜)、Simple Quilt Apex: €215。
6. おわりに:「戦火」という重さを背負いながら作られるもの
LITEWAYのギアを手に入れることは、単純に「軽いものを買う」ではない気がしている。
毎日のように空襲警報が鳴り響く街で、職人たちが誇りを持って縫い上げた一枚の生地が、海を渡って手元に届く。それを背負って山に入るとき、担いでいるのは単なるUHMWPEとポリエステルではない——そんな感覚があって、悪くないと思う。
実際に気になっているのはPyraOmm Solo。今使っているDurston X-Midがあるから買い替えるほどではないが、ソロの軽量ピラミッドとしてあの360gは十分な選択肢だ。いずれDuoで誰かと歩くときに、本気で検討したい。
日本への発送には時間がかかる場合がある。でも、それがどういう意味を持つかを知った上で、待てると思う。