山道具ラボ by Daringdaddy

#山で使う道具の話 #軽さと快適さのあいだ #買う前に知りたかったこと

ザ・ノース・フェイス SUM 35 / SUM 45 レビュー|「外は濡れていい」という設計が正しかった話

※本記事にはアフィリエイト広告のリンクが含まれています。紹介リンク経由でのご購入により、当サイトは手数料を受け取ることがあります。

レインカバーが飛ばされた日から、ザックの防水に対する意識を変えた

北岳の稜線で、猛烈な爆風と霧雨を食らったことがある。雨量としては土砂降りではない。だが風が狂っていた。霧雨が横から、下から、後ろから、ありとあらゆる方向からザックに叩きつけられる。そこで何が起きたか。ULA CDTに付けていたレインカバーが飛ばされ、中身がぐしょぐしょになった。

あのとき思った。ザックカバーという防水は、風に負ける。

だから、ザ・ノース・フェイスの「SUM 35 / SUM 45」を見たとき、ちょっと目が止まった。これは普通の登山ザックではない。ザック本体を防水生地で固めるのでもなく、レインカバーで外から守るのでもない。外側は濡れてもいい。中のパックライナーで守る。この割り切りが、かなり面白い。

公式には「疎水性の高いモノメッシュ」と「防水仕様(IPX4)のパックライナー」による二重気室構造の軽量トレッキングパックと説明されている。SUM 35は税込36,300円、SUM 45は税込40,700円。2026年春夏のザック界に、なかなか変なやつが出てきた。

ザ・ノース・フェイス SUM 35 TNFオレンジ
ちょっと金魚を想起してしまう独特すぎる見た目。
画像引用: THE NORTH FACE公式

 

Sum 35 NM62601 TNFオレンジ L/XL
THE NORTH FACE
Sum 35 NM62601 TNFオレンジ L/XL
サム45 NM62600 TNFオレンジ
THE NORTH FACE
サム45 NM62600 TNFオレンジ

 

「SUM」という名前が示すもの ── TNFザック技術の集大成

このザックの名前には意図がある。

「SUM」とは、ザ・ノース・フェイスがこれまで開発してきたバックパック技術の合計(Sum)を集約したパックという意味だ。アルパイン、トレイルランニング、トレッキング。それぞれのカテゴリで積み上げてきた技術を一本に集めた、という宣言がこのネーミングに込められている。

実際、製品の各所にそれが見える。磁石式チェストストラップはランニングパック「HUMEシリーズ」から来ている。本体モノメッシュ素材も、HUMEシリーズ向けに開発されたトレイルランニング用素材がベースだ。背面パッドはアルパイン系の着脱設計を踏襲しつつ、取り外してスリーピングマット代わりにも使える。フレームはテープ固定方式で故障リスクを抑えるアルパイン的割り切り。

「集大成」という言葉はよく使われるが、SUMはそれが嘘くさくない。部品一つひとつに来歴がある。

SUM 35 / SUM 45とは何か ── 濡らさないザックではなく、濡れても破綻しにくいザック

SUMシリーズの核心は、普通の防水ザックとはまったく違う。

多くの登山ザックはこう考える。

  • ザック本体の撥水で雨を弾く
  • 雨が強くなったらレインカバーをかける
  • 中身はスタッフサックやビニール袋で守る

これは王道だ。だが、強風稜線では弱い。レインカバーはバタつく。めくれる。ズレる。最悪、飛ぶ。カバーが飛んだ瞬間、ザック本体の生地・縫い目・開口部が直接雨に晒される。北岳の爆風霧雨では、まさにこれが起きた。

SUMは考え方が違う。

ザック本体は、そもそも水を含みにくいモノメッシュで作る。雨を完全に止めるのではなく、保水しにくく、乾きやすくする。そして濡らしたくないものは、メイン気室内の防水パックライナーに入れる。

つまりSUMは、「ザック全体をドライに保つ道具」ではない。むしろ外側はウェットゾーンとして割り切り、内側にドライゾーンを作る道具だ。

これ、かなり山っぽい。きれいごとじゃない。雨の日のザックなんて、どうせ外側は濡れる。ショルダーも濡れる。ウエストハーネスも濡れる。外ポケットも濡れる。だったら、濡れても重くならず、乾きやすく、中の防水だけ確実にしようぜ、という発想である。潔い。潔すぎて、ちょっと笑う。

スペック早見表

項目 SUM 35 SUM 45
型番 NM62601 NM62600
価格(税込) 36,300円 40,700円
容量 SM:35L / LXL:37L SM:45L / LXL:47L
重量(ライナー込み) SM:約875g / LXL:約915g SM:約940g / LXL:約995g
本体重量 SM:約725g / LXL:約760g SM:約770g / LXL:約820g
パックライナー重量 SM:約150g / LXL:約155g SM:約170g / LXL:約175g
メイン素材 160Dナイロンモノメッシュ、210D Spectraリップストップナイロン 160Dナイロンモノメッシュ、210D Spectraリップストップナイロン
パックライナー素材 70Dモノフィラメントリップストップナイロン(IPX4) 70Dモノフィラメントリップストップナイロン(IPX4)
背面抗菌処理 DEORANGE(抗菌防臭) DEORANGE(抗菌防臭)
向く用途 日帰りロング、小屋泊、UL装備の1泊 テント泊、縦走、荷物多めの山行
ザ・ノース・フェイス SUM 45 TNFオレンジ
画像引用: THE NORTH FACE公式

重量だけ見ると、SUM 35の約875g、SUM 45の約940gは、ULザックとしては「めちゃくちゃ軽い」とまでは言わない。Trail Bum GO-ONの680g級や、フレームレスULパックの500g台と比べれば重い。

でもここで見るべきは、重量の中身だ。SUM 35の875gには、約150gの防水パックライナーが含まれている。SUM 45なら約170g。つまり本体だけなら、SUM 35は約725g、SUM 45は約770g。ここにIPX4ライナーを統合して、レインカバーを捨てる設計にしている。

これは単なる軽量化ではない。雨の日のシステム全体を軽くする設計だ。

素材深掘り ── 160Dナイロンモノメッシュという変な主役

モノメッシュ本体:雨を止めるのではなく、雨を抱え込まない

SUMのメイン素材は、160Dナイロンモノメッシュ。これがいきなり変だ。普通、登山ザックのメイン素材といえば、210Dナイロン、330Dナイロン、420Dナイロン、あるいは最近ならUltra200XやX-Pacのようなラミネート素材を想像する。

SUMは違う。メッシュである。

この素材、実はTNFのトレイルランニングパック「HUMEシリーズ」向けに開発されたものがベースになっている。汗や水分を吸収しない素材として走り系パックで鍛えた生地を、登山ザックに応用した。そのため張りとコシが想像より強く、パッキングでザック形状が崩れにくい。

メッシュと聞くと、弱そうに感じるかもしれない。スカスカで、シャリッとして、何なら中身が透ける。実際、SUMは中身が見える。パッキングが雑だと、雑さまで見える。これは便利でもあり、恥ずかしくもある。ザックに性格診断されているみたいである。

ザ・ノース・フェイス SUM 35 詳細
画像引用: THE NORTH FACE公式

ただ、このモノメッシュには明確な狙いがある。水を含みにくいこと。

一般的なザック生地は、雨を受けると表面の撥水が落ち、織り目や裏面コーティング周辺に水分を抱え込む。濡れたザックは重くなる。乾きも遅い。休憩で地面に置けば、底面からさらに水を吸う。じわじわ、ぬめっと重くなる。

SUMはそこを捨てている。防水膜で覆うのではなく、そもそも保水しにくい生地にする。雨に濡れても、水をため込まず、ツーツー抜ける方向へ寄せる。これにより、ザック本体の濡れによる重量増を抑える。

この考え方はかなり沢登りっぽい。濡れないようにするのではなく、濡れても水が抜けるようにする。潔い。山道具としては、むしろこちらの方が現実的な場面がある。

210D Spectraリップストップ:メッシュだけでは不安な場所を補強する

とはいえ、ザック全体がモノメッシュだけだと不安が残る。岩に置く。木の枝に擦る。テントポールを外付けする。サイドポケットにボトルを突っ込む。バックパックは、山でだいたい雑に扱われる。本人は丁寧なつもりでも、岩と木は容赦しない。

そこでSUMは、210D Spectraリップストップナイロンを組み合わせている。

Spectraは、ハネウェル社が製造するUHMWPE(超高分子量ポリエチレン)繊維の製品名だ。同重量のスチールと比較して約15倍の比強度を持ち、アラミド繊維より約40%高い比強度を誇ると技術資料に記載されている。ポリエチレン系繊維のため比重が0.97と低く、水に浮く特性を持つ。引裂き強度と耐摩耗性が高い素材で、ロープや防弾ベスト、高強度ラインなど「切れては困る」用途に幅広く使われてきた。

もちろん「Spectra入りだから全部が無敵」という意味ではない。大事なのは、引裂きや荷重が集中しやすい箇所に高強度繊維を入れていることだ。サイドポケットもSpectraストレッチ素材を採用しており、ボトルやトレッキングポールの着脱で負荷がかかる部位の耐久性を上げている。

モノメッシュで水抜けと軽さを稼ぎ、Spectraリップストップで裂けへの抵抗を足す。ここはかなり理屈が通っている。

70Dモノフィラメントリップストップナイロンのパックライナー

SUMの心臓は、本体生地ではなくパックライナーだ。

公式説明では、パックライナーには疎水性・速乾性の高いモノフィラメント素材を採用し、裏面にはコーティング+シームテープ処理を施してIPX4防水仕様としている。つまり、ただのビニール袋ではない。ザックの中に吊るされる、専用形状の防水気室である。

多くの人はパックライナーと聞くと、ゴミ袋やSea to Summitの大きい防水袋を想像すると思う。それはそれで強い。僕も爆風雨の山なら、ザックカバーよりパックライナーを信じる。

ただ、SUMのライナーは標準装備であり、ザック形状に合わせて設計されている。汎用袋を突っ込むより、パッキングの重心が作りやすい。中で袋がぐにゃぐにゃ暴れにくい。ここが地味に効く。

汎用ライナーは防水性では強いが、パッキングの収まりが雑になりやすい。SUMの標準ライナーは、そこを最初から設計に組み込んでいる。これはかなり偉い。

IPX4をどう読むか ── 完全防水ではなく「全方向の飛沫に耐える」

SUMのパックライナーはIPX4防水仕様だ。ここで一度、冷静になりたい。

IPX4は、全方向からの水しぶきに対する保護等級である。雨や飛沫の多い環境に適用される試験であり、水没や強い噴流水への保護を意味するものではない。

つまり、SUMのライナーはこう読むのが安全だ。

状況 SUMの標準ライナー コメント
普通の雨 かなり強い ライナーを正しく閉じれば安心度は高い
横殴りの霧雨 強い IPX4の得意領域に近い
爆風霧雨4時間 かなり戦える ただし開閉運用が重要
沢で水を浴びる 状況次第 水流や圧が強いと過信禁物
水没 対象外 ドライバッグの代わりにはしない

ここを間違えると危ない。SUMは「ザック全体がドライバッグになる」製品ではない。あくまで、外側は濡れる。本体も濡れる。濡らしたくないものをIPX4ライナー内に隔離する。この思想のザックだ。

なので、寝袋・ダウン・電子機器・財布・ヘッドライトなど、本当に濡れると詰むものは、ライナー内に入れたうえで、必要に応じて個別防水袋に入れてもいい。SUMは強い。でも山の爆風雨をなめると、だいたい山が勝つ。

素材4軸分析

1. 耐久性・引裂強度

SUMは、耐摩耗性でUltra200XやX-Pac VX42のような「分厚い防具系素材」と殴り合うザックではない。

160Dナイロンモノメッシュは、保水しにくさと軽さが主役。ガリガリの岩に雑に置く、藪で擦る、岩稜帯で背面や底を削る、という使い方では、厚手ナイロンやUltra400X級の方が安心感はある。

ただし、SUMはメッシュ一枚芸ではない。210D Spectraリップストップナイロンを組み合わせ、サイドポケットにも耐久性の高いSpectraストレッチ素材を使っている。つまり、全体を過剰に重くせず、弱点になりやすい場所へ高強度素材を入れている。

藪漕ぎ・岩稜ゴリゴリ用ではない。だが、雨・沢・ファストハイク・軽量テント泊の範囲では、かなり合理的な耐久設計。

2. 吸水性・撥水・防水性

SUMの防水性は、一般的なザックと分解の仕方が違う。

普通のザックは、本体生地の撥水・コーティング・レインカバーで外から守る。SUMは違う。本体は水を含みにくく、濡れても乾きやすい。防水は内部ライナーが担う。

  • 本体:濡れても重くなりにくい
  • パックライナー:濡らしたくないものを守る
  • 外ポケット:濡れてもいいものを置く

雨の山で一番大事なのは、どこがドライゾーンで、どこがウェットゾーンかを決めることだ。SUMはそれを製品設計としてやっている。

一方で、外ポケットやショルダーポケットは濡れる前提になる。そこにダウンや予備グローブやモバイルバッテリーを入れると、普通に濡れる。SUMは魔法ではない。ルールが明確なザックだ。

3. 軽量化

SUM 35はSMで約875g、LXLで約915g。SUM 45はSMで約940g、LXLで約995g。数字だけ見れば、ULど真ん中ではない。

たとえばSUM 45 SMは約940gだが、本体約770g、パックライナー約170g。45L級で本体770gなら、かなり軽い。ここにザックカバーではなく、専用防水ライナーを足している。

レインカバー、ドライバッグ、スタッフサックを足し込んだ「雨の日の実運用重量」で見ると、SUMの評価はかなり上がる。その道具を使うために、周辺装備がどれだけ減るか。ここまで含めて見ると、SUMの軽さはかなり現実的だ。

4. トレードオフ

得るもの 失うもの
濡れても重くなりにくい本体 中身が透ける
ザックカバー不要の思想 外ポケットは濡れる前提
IPX4ライナーによる内部ドライゾーン ライナー開閉が防水成否を左右する
保水しにくく乾きやすい外殻 厚手ザックのような雑な耐摩耗安心感は薄い
雨・沢・ファストハイクへの適性 街で中身が見えるのが気になる人もいる

特に「中身が透ける」は好みが分かれる。これはメリットでもある。どこに何を入れたか外からわかるし、スタッフサックの色で遊べる。だが、パッキングが汚いと全部見える。山用ザックで突然インテリアセンスを問われる。なんだこの圧。

構造・ディテール ── SUMはトレッキングパックの皮をかぶったファストハイク道具

ザ・ノース・フェイス SUM 35 構造ディテール
画像引用: THE NORTH FACE公式

ロールトップ式クロージャー

SUMはサイドとトップの2通りの固定が可能なロールトップ式。雨蓋ではない。

ここはかなり思想が出ている。雨蓋式のザックは小物収納に強く、クラシックな登山では便利だ。だが、雨の日には雨蓋まわりが水を抱えるし、カバー運用も絡む。SUMはロールトップで容量変化に対応しつつ、ライナーとの相性を取りにいっている。

ただし、ロールトップは閉じ方が雑だと弱い。爆風雨では、巻きが浅いと口周辺が濡れる。SUMの場合、最終防衛線はライナーなので、本体ロールトップは「第一関門」くらいに考えるのがよい。

マグネット式チェストストラップ

SUMには、上下位置調整と素早い脱着ができるマグネット式チェストストラップが2本配置されている。これはトレランパックの影響が濃い。

一般的な登山ザックのチェストストラップは1本。SUMは2本。これにより、ショルダーハーネスを胸側で面として押さえやすくなる。ファストハイク的にテンポよく歩くとき、ザックの横揺れを抑えやすい。

着脱式ショルダーポケット

Spectraストレッチ素材を使ったショルダーポケットは、ボトルやスマホ収納に対応する。しかも取り外し可能。代わりにカメラケースを付けるようなアレンジもできる。

ザックを下ろさずに水、スマホ、行動食へアクセスしたい。トレランパックに慣れた人ほど、ショルダー収納なしの登山ザックには戻りにくい。SUMはこのあたりをかなり意識している。

ただし、爆風霧雨ではショルダーポケットは濡れる。スマホを入れるなら防水ケースやジップ袋を併用したい。AquaGuard系ファスナーが使われていても、公式にも完全防水ではない旨が書かれている。ここは雑に信じない方がいい。

上下調整・着脱可能なウエストハーネス

ウエストハーネスは取り外し可能で、上下位置調整もできる。クライミングハーネスを使う場面では干渉を避けるために外せる。ウエスト・背面にはDEORANGEという抗菌防臭処理が施されており、濡れた状態での臭い残りを抑える。長期山行では地味に効いてくる。

取り外し可能な背面パッド

背面パッドは取り外しが可能で、そのままスリーピングマット代わりとして使える。厚みや断熱性は専用スリーピングパッドには届かないが、軽量装備でのビバーク時や休憩時の地面断熱材として機能する。テープ固定方式を採用したシンプルなフレーム構造は、故障リスクを抑えるアルパイン系の設計思想を踏まえたものだ。

北岳稜線の爆風霧雨でどうなるか ── 4時間シミュレーション

僕がSUMに一番興味を持った理由は、北岳稜線のような「爆風霧雨」でどうなるかを考えたかったからだ。上から降る雨なら、普通のレインカバーでもある程度は守れる。問題は、霧雨が全方位から飛んでくる状況である。

レインカバーはここで負ける。風でめくれる。飛ぶ。隙間から吹き込む。ではSUMはどうか。

0〜15分:外側は濡れ始める。中は無傷

SUM本体のモノメッシュは、雨を止める防壁ではない。だから外側はすぐ濡れる。だが、ここで焦る必要はない。外側が濡れることを前提に、内部ライナーで守るザックだ。

部位 状態
本体モノメッシュ 濡れ始めるが、保水しにくい
外ポケット 濡れる前提
ショルダー・ウエスト 濡れ始める
パックライナー内 ドライ

15〜60分:外側は完全ウェットゾーン化

爆風霧雨では、雨粒が横から来る。後ろから来る。下から巻き上がる。ザックカバーなら嫌な時間帯だ。SUMの場合、ここでレインカバーがないことがむしろ強みになる。飛ばされるものがない。外殻が保水しにくいので、ぐずぐずに重くなりにくい。

重要なのは、ライナーを開けないこと。ライナー内は聖域。稜線上でこれを開けると、全方位から霧雨が入る。SUMの防水性というより、人間の運用が負ける。

1〜2時間:ライナー外側は濡れていても、中は守られる

このあたりから、SUMの二重構造が効いてくる。濡らしたくないものがライナー内に入っていれば、守られる。

  • ライナー内:寝袋、ダウン、着替え、電子機器、行動不能時の保温具
  • ライナー外:濡れてもいいもの、すぐ使うもの、レインウェア、水、行動食の一部

3〜4時間:勝敗は「ライナーを開けなかったか」で決まる

部位 4時間後の予想
本体外側 完全に濡れる
モノメッシュ 水は含みにくく、乾きは早い方向
パックライナー内 正しく閉じていれば高確率でドライ
ダウン・寝袋 ライナー内ならかなり安全。個別防水でさらに安心

ライナーを頻繁に開ける人には向かない。爆風霧雨の中でライナーをガバッと開けると、その瞬間にドライゾーンが汚染される。SUMは防水ザックというより、ドライゾーン管理ザックだ。

SUM 35とSUM 45、どっちを選ぶか

SUM 35が向く人

  • 日帰りロングが多い
  • 夏の小屋泊・避難小屋泊を想定している
  • 装備がすでに軽い
  • 30Lでは少し不安だが、45Lは大きすぎる
  • ファストハイク寄りに使いたい

SUM 35は、LXLで37L。パックライナーが標準で容量設計に入っているため、濡らしたくないものをメインにまとめ、外側には濡れていいものを振り分けられる。UL装備が整っている人なら、夏の白根三山や小屋泊縦走にもかなり現実的だろう。

SUM 45が向く人

  • テント泊をする
  • 防寒着や食料で荷物が増えやすい
  • 雨の縦走で容量に余裕を持ちたい
  • 沢登りや濡れ物の分離を重視する
  • 軽量冬山・残雪期の装備も視野に入れる

SUM 45はSMで45L。重量はSMで約940g。45L級でIPX4ライナー込み1kg未満というのは、なかなか攻めている。防水ライナーはパンパンに詰めるほど閉じにくくなる。容量に余裕があれば、ライナーを深く閉じやすい。これは防水性に直結する。雨の山では、余った容量は正義になることがある。

買う前に知っておきたい弱点

1. 外ポケットは濡れる

外ポケットはウェットゾーン。予備のダウン、乾いた手袋、紙地図、モバイルバッテリーをそのまま入れると、普通に負ける。

2. 中身が透ける

SUMはモノメッシュなので、中身が見える。パッキングが散らかっていると、その散らかりが外へ漏れる。ザックに「お前の荷物管理、雑だぞ」と言われる。つらい。

3. 厚手ザックのような耐摩耗安心感はない

210D Spectraリップストップの補強はある。だが主役は160Dナイロンモノメッシュだ。Ultra400Xや厚手Corduraのような安心感とは別物。沢、雨、ファストハイク、軽量縦走には向く。藪・岩・雑置きメインなら別の選択肢も見るべきだ。

4. IPX4ライナーは水没用ではない

本当に濡れると困るものは、ライナー内でも個別の防水袋に入れる。これは過剰ではない。山では最後の保険が効く。

価格対価値 ── 36,300円 / 40,700円は高いか

SUM 35は税込36,300円。SUM 45は税込40,700円。安くはない。でも内容を見ると、かなり納得感はある。

  • 軽量なモノメッシュ本体(HUMEシリーズ由来の素材)
  • 210D Spectraリップストップ補強+Spectraストレッチサイドポケット
  • 70DモノフィラメントリップストップナイロンのIPX4ライナー
  • マグネット式チェストストラップ(2本)
  • 着脱式ショルダーポケット
  • 調整・着脱可能なウエストハーネス(DEORANGE抗菌処理)
  • 取り外し可能な背面パッド(マット転用可)

Sea to Summitなどの防水ライナーを別途買い、ザックカバーを買い、雨用の運用を組むことを考えると、SUMは最初から雨天システムが組み込まれている。「ザック単体」ではなく「雨の日のパッキングシステム一式」として見るべきだ。

 

Sum 35 NM62601 TNFオレンジ L/XL
THE NORTH FACE
Sum 35 NM62601 TNFオレンジ L/XL
サム45 NM62600 TNFオレンジ
THE NORTH FACE
サム45 NM62600 TNFオレンジ

 

こんな人に刺さる / こんな人は別の選択肢を

刺さる人

  • 爆風稜線でザックカバーが飛ばされた経験がある人
  • 沢登りや雨天ハイクで、ザック本体の保水を嫌う人
  • テント泊・小屋泊で、濡らしたくないものを明確に分けたい人
  • ファストハイク寄りの背負い心地と収納アクセスを求める人
  • 普通の登山ザックより、少し変な設計思想に惹かれる人

別の選択肢を探すべき人

  • 外ポケットまで全部ドライにしたい人
  • 中身が透けるザックが嫌な人
  • 藪漕ぎや岩稜でザックを雑に扱うことが多い人
  • 荷重15kg以上を快適に背負いたい人

「防水ザック」ではなく「濡れを管理するザック」だ

SUM 35 / SUM 45は、かなり面白い。

このザックを「防水ザック」と呼ぶと、少しズレる。外側は濡れる。外ポケットも濡れる。ショルダーもウエストも濡れる。

だが、濡れても重くなりにくい外殻を作り、内側にIPX4のドライゾーンを作る。雨の山で本当に守るべきものを、ザックの中で分離する。

レインカバーは飛ぶ。パックライナーは飛ばない。

北岳の爆風霧雨でザックカバーを失った人間からすると、この一点だけでSUMの思想はかなり刺さる。

SUM 35は日帰りロングから小屋泊、UL装備の1泊に。SUM 45はテント泊や雨の縦走に。「濡れないザック」ではなく、「濡れても破綻しにくいザック」として見ると、急に魅力が立ち上がってくる。


 

Sum 35 NM62601 TNFオレンジ L/XL
THE NORTH FACE
Sum 35 NM62601 TNFオレンジ L/XL
サム45 NM62600 TNFオレンジ
THE NORTH FACE
サム45 NM62600 TNFオレンジ