- 2泊目に負けるのは、対策が足りないからではない|守れていない場所があるだけ
- ニオイは一種類ではない|4つの部位で、原因物質も強く出る年代も違う
- 「デオドラント」と書いてあっても中身は同じではない|テント泊で使う3本の成分表
- 山で汗は止めるべきか|「止めると危ない」は研究で否定されている
- ワキの次に来るのは後頭部|シュラフのフードが、3晩つづけて同じ枕になる
- テント場で体は「拭く」しかない|薬用シートと大判シートを目的で分ける
- 足と靴は別勘定|イソ吉草酸は、体を拭いても靴の中に残る
- 連泊のウェアと帽子|ポリエステルに菌が住みつくと、拭いても戻らない
- 香水や柔軟剤はクマを呼ぶのか|長野県の回答は「因果は確立していない」
- まとめ:手持ちの道具を、5つの持ち場に割り振り直す
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2泊目に負けるのは、対策が足りないからではない|守れていない場所があるだけ
テント泊のニオイ対策を検索する人は、たいてい何もしていない人ではない。デオドラントは塗っている。シートも持っている。それでも2日目の夜、シュラフにもぐり込んだ瞬間に「あ、これは自分だ」と気づく。
僕もそうだった。ワキにはアメリカ製のスティックを塗っていて、これが不思議なくらい効く。日帰りや1泊なら、ワキだけは本当にニオわない。2泊でもギリギリいける。ただし、いけるのは「塗ったところ」だけだ。2日目に立ってくるのは、いつも塗っていない場所のほうだった。
原因をたどると、ニオイは一つのものではなく、部位ごとに原因物質が違い、強く出る年代まで違う。そして市販の製品は、それぞれ違う部位を担当している。同じ「デオドラント」という言葉で売られていても、中身が全然そろっていない。
しかも山には、洗って落とすという逃げ道がない。石けんも洗剤も使わないのが、山のテント場だからだ。汚れを落としきれない前提で、どこを守るかを決めるしかない。
だからテント泊のニオイ対策は、新しく何かを買い足す話というより、手持ちの道具を部位ごとの持ち場に割り振り直す作業になる。空いている持ち場さえ埋まれば、荷物はほとんど増えない。
ニオイは一種類ではない|4つの部位で、原因物質も強く出る年代も違う
汗そのものは、出たばかりならほとんどニオわない。皮膚にいる菌が、汗や皮脂や角質を食べて分解したときに、はじめて不快な分子が生まれる。
そしてどの菌が、何を、どう分解するかは部位ごとに違う。出てくる物質が違えば、効く道具も変わる。
ワキ|酸っぱく獣くさい。つくっているのはコリネバクテリウム
ワキから出るものは、それ自体ほとんど無臭だ。コリネバクテリウムという菌の酵素がそれを切ったときに、はじめて酸っぱく獣くさい脂肪酸(3M2H)に変わる。市販のワキ用デオドラントが狙っているのは、この菌とこの反応だけだ。
後頭部・うなじ|乳酸から生まれるジアセチル
マンダムの研究によれば、汗に含まれる乳酸を皮膚のブドウ球菌が代謝すると、ジアセチルという物質ができる。使い古した油のような、あのモワッとしたニオイの正体で、発生の中心は後頭部・頭頂部・うなじとされている。
そして強く出る年代がはっきりしている。30代半ばから50代半ばがピークだという。テント泊縦走をしている層と、きれいに重なる。
胸・背中|皮脂が酸化してできるノネナール
資生堂が1999年に見つけたノネナール(2-ノネナール)は、加齢とともに増える皮脂成分パルミトオレイン酸が酸化してできる。同社は、男女を問わず40歳を過ぎたころから増えてくるとしている。ワキとは発生の仕組みからして別物なので、ワキ用の製品では手が届かない。
足|角質と汗から生まれるイソ吉草酸
足のニオイの主役はイソ吉草酸で、汗と角質を皮膚常在菌が分解してつくる。納豆やブルーチーズに近い、あのツンとくる酸のにおいだ。靴という密閉容器の中で、湿度も温度も菌に都合よく整うので、山ではとくに育ちやすい。
「デオドラント」と書いてあっても中身は同じではない|テント泊で使う3本の成分表
ニオイ対策の製品は、ジャンル名が同じでも、中で働いているものがまるでそろっていない。売り場に並ぶ3本の成分表を開くと、設計思想が3つとも違う。
オールドスパイス ピュアスポーツ|処方の大半はグリコール、それを石けんで固めている
僕がワキに使っているのがこれだ。長らく並行輸入で買っていて、2026年4月下旬からP&Gが国内販売を始めたので、いまはドラッグストアでも手に入る。1937年にシュルトン社が出した香水がブランドの出発点で、1990年からはP&Gが持っている。ピュアスポーツという香りは2004年に加わった系統で、レモンとライムのトップに、リコリスの甘さがうっすら乗る。
成分表はこう並ぶ。DPG、水、PG、ステアリン酸Na、ポロキサミン1307、香料、PPG-3ミリスチル、EDTA-4Na、色素が2種類。汗を止めるアルミニウム塩も、日本で殺菌の有効成分として承認されている類の成分も、入っていない。製品自身が「アルミニウムフリー」を掲げている。
ここで「じゃあ香りだけか」と結論を急ぐと、処方を読み違える。この並びは、透明スティックと呼ばれる古典的なデオドラントの型そのものだ。
透明スティックは、グリコールという液体をステアリン酸Na(=石けん)でゲルに固めてつくる。処方例を見ると、グリコール類が全体の55〜70%を占め、石けんは5〜8%しか使わない。石けんは形を保つための骨組みで、中身の大半はグリコールのほうだ。日本の化粧品は1%以上の成分を配合量の多い順に書く決まりなので、DPGが筆頭に来ているこの製品も同じ構造だと読める。
そのグリコールに、抗菌のはたらきが報告されている。2025年に Journal of Antimicrobial Chemotherapy に載った試験では、プロピレングリコールが黄色ブドウ球菌と表皮ブドウ球菌の発育を止める濃度は12.5%で、皮膚に近い弱酸性でも中性でも同じだった。透明スティックのグリコール濃度は、その4〜5倍にあたる。
ブドウ球菌は、この記事で何度も出てくる菌だ。後頭部でジアセチルをつくり、足でイソ吉草酸をつくる、あのブドウ球菌である。
つまりこの製品は、菌が増えにくい濃さのグリコールを肌に置き、そこに香りを重ねるという設計になっている。日本の制度でいう「有効成分」は使っていないので区分は化粧品だが、何も仕事をしていないわけではない。P&G自身、このラインで長時間の防臭を掲げている。
透明であることにも意味がある。白い跡が服に残らないので、着替えの少ない山では地味に効く。
そしてアルミフリーは「作れなかった」のではなく「選んだ」ものだ。米国のオールドスパイスには、アルミニウム塩を17%配合した制汗剤版が別のラインとして並んでいる。同じブランドが両方持っていて、日本に来たのは汗を止めない側だった。
買うときに迷いやすい点がひとつある。米国版の High Endurance 85gスティックと、日本正規の45mLフレグランスバーは、公開されている成分表が配合順まで一致する。中身は同じものだ(紫201はViolet 2、緑202はGreen 6と、同じ色素の日米表記にすぎない)。量あたりの値段は85gのほうが安い。
ただし85g版は並行輸入で、輸送・保管の条件がメーカーの管理下にないし、不具合があっても国内窓口がない。毎日肌に塗るものなので、まず試すなら国内正規の45mLからでいい。合うと分かってから大きいほうに移る、で十分だ。
デオナチュレ 男ソフトストーンW|汗を止める成分と、菌を殺す成分が両方入る
同じ「ワキに直接塗るスティック」でも、こちらは医薬部外品で、有効成分が2つ明記されている。焼ミョウバンが汗を抑え、イソプロピルメチルフェノールが菌を殺す。ニオイができる経路を、材料の側と菌の側の両方からふさぎにいく。
香りで覆う道ではないので、無香で成立する。1本20gと小さく、山に持ち込む重さとしても軽い。
エージーデオ24のシート|ワキ以外にも塗れる殺菌成分
3本目は拭き取り側の定番、エージーデオ24のシャワーシートだ。ブランド名のAgは銀の元素記号だが、この製品の成分表で有効成分に立っているのは銀ではなく、イソプロピルメチルフェノール(殺菌)とパラフェノールスルホン酸亜鉛(制汗)の2つ。銀は「アパサイダーC」としてその他の成分の側にいる。
買うときに効いてくるのはここだ。この1枚には、ワキ用スティックと同じ殺菌成分に加えて、汗を抑える成分まで入っている。しかも塗る場所を選ばない。首の後ろにも、うなじにも、胸にも使える。ワキ以外の持ち場を埋めるとき、いちばん素直に効く道具がこれになる。
山で汗は止めるべきか|「止めると危ない」は研究で否定されている
ここまでで、ワキに塗るものが2系統に割れた。汗を止めないオールドスパイスと、焼ミョウバンで汗を止めるデオナチュレ。山でどちらを選ぶかは、直感で決めると間違える。
直感はこうだ。「登山は体温調節のために汗をかく行為なのだから、制汗剤で汗腺をふさぐのは危ない」。もっともらしい。だがこれは調べられていて、否定されている。
2003年に International Journal of Cosmetic Science に載ったバリーらの研究は、運動と暑熱のストレス下で全身の発汗率と深部体温を測っている。結果は2つ。腋窩の発汗は全身の発汗量の1%にも満たない。そして制汗剤でそこを止めても、深部体温が上がったあとの体温調節能力は変わらなかった。論文は「消費者のこの懸念には根拠がないように見える」と結んでいる。
1%だ。ワキを止めても、体は残りの99%で放熱している。山だから制汗剤を避ける、という理屈は立たない。
では何で選ぶか。実際に差が出るのは、体温ではなく着心地と持ち物のほうだ。
- 白い跡が服に残るか。オールドスパイスは透明スティックなので跡が出ない。着替えの少ない縦走では地味に効く
- ワキが濡れる感触が残るか。制汗剤は汗そのものを減らすので、ベタつきの体感は変わる。全身の放熱には関係なくても、不快さには関係する
- 香りを足したいか、足したくないか。ここがいちばん大きい。テントは狭く、同行者がいる。無香で済ませたいならデオナチュレ、香りごと切り替えたいならオールドスパイス
もう一つ、効き方が人によって割れる理由がある。ワキのニオイの強さは、ABCC11という遺伝子の型でだいぶ決まる。この遺伝子が働かない型の人は腋臭症のリスクがほとんどなく、その型が東アジアでは8〜9割、欧米やアフリカでは数%しかいない。
ここから読めるのは、日本人がどうという話ではなく、自分がどちらを相手にしているかで必要な火力が変わるということだ。アポクリン由来の強いニオイが出る人には、香りとグリコールで覆う設計は足りない。殺菌成分と制汗成分が入った医薬部外品のほうへ行くほうがいい。逆に、エクリン汗と菌がつくる普通の汗臭が相手なら、この設計で足りることが多い。
いずれにしても共通しているのは、ここまでの話がぜんぶワキの中で完結していることだ。
ワキの次に来るのは後頭部|シュラフのフードが、3晩つづけて同じ枕になる
ジアセチルの話に戻る。マンダムは発生の中心を後頭部・頭頂部・うなじとしたうえで、これが枕のニオイの原因にもなっていると書いている。同社はさらに、40代になると男性がよく汗をかく場所はワキから後頭部〜首の後ろへ移っていくとも述べている(こちらは断定を避けた書き方をしている)。
山で枕にあたるのは、シュラフのフードだ。後頭部とうなじが、毎晩8時間そこに押しつけられる。洗わずに、翌日また同じものを使う。2泊目3泊目にシュラフが重たくニオうのは、自分の後頭部がそこに移ったからだ。
だから対策は2つに分かれる。皮膚の側と、布の側。片方だけやっても翌晩には元に戻る。
皮膚の側|シュラフに入る前に、生え際とうなじを拭く
頭髪そのものは水なしでは洗えない。だがニオイが出ているのは髪ではなく頭皮と、うなじの皮膚だ。そして皮膚なら拭ける。
薬用シートを1枚、シュラフに入る直前に使う。前髪をかき上げて生え際、耳の後ろ、うなじ、首の付け根。ここは殺菌成分の入った小さいシートで足りる。行動中に汗をかいた区切りで拭くのではなく、寝る直前に拭くのが要点だ。翌朝までの8時間、フードに触れ続けるのはこのあとの皮膚だから。
布の側|フードに1枚かませて、その1枚だけを毎日入れ替える
ここが抜けやすい。皮膚を拭いても、前の晩の皮脂が乗ったフードに頭を戻せば同じことになる。シュラフは山では洗えないので、汚れを受ける消耗品を1枚あいだに挟む。
手ぬぐいをフードに広げて敷き、朝は外してザックの外側に吊るす。夜は面を裏返して使う。綿の手ぬぐいは1枚40g前後で、乾きも早い。やっていることは単純で、汚れる先を「洗えないもの」から「洗えるもの」へ移し替えているだけだ。フードは山では洗えないが、手ぬぐいは家で洗える。
シュラフ側の手当ても同じ発想でいい。朝、撤収までのあいだフードを裏返して外気に当てておく。夜のあいだに吸った湿りを、その場で少しでも戻す。
テント場で体は「拭く」しかない|薬用シートと大判シートを目的で分ける
山に排水設備はない。石けんを使えば、その水はそのまま土に染みて沢へ行く。だから食器すら洗剤で洗わないのが山のテント場で、湯も出ないし、全身を流せる量の水を自由に使える場所でもない。残っている手はひとつ、拭くことだけだ。
ここで押さえておきたいのは、拭いて減らせるのは菌そのものではなく、菌のエサのほうだということ。汗・皮脂・角質を取り去れば、分解される材料が減るのでニオイの生成が落ちる。菌は皮膚に住んでいるので、拭いてもまた戻ってくる。だから「一度拭けば一日もつ」ではなく、汗をかいた区切りごとに材料を捨てるという使い方になる。
薬用シート|殺菌成分で、菌の側にも手を入れる
僕が山に持っていくのは、この銀の名前がついた薬用シートのほうだ。1枚が小さく、休憩のたびにワキと首だけ手早く拭ける。無香性を選べば、オールドスパイスの香りと喧嘩しない。ワキはスティック、それ以外はこのシート、という分担で回している。
大判シート|殺菌成分はないが、1枚で全身が拭ける
もう一方に、介護用品の棚に置かれている大判のからだふきタオルがある。60×30cmと大きく厚手で、1本ずつ個包装。面積があるぶん、1枚で上半身から脚まで届く。薬用の殺菌成分は入っていないので、役割は皮脂と汗を物理的に持ち去ること一本になる。20本入りで¥352なので、泊数ぶんだけ抜いて持てばいい。
薬用の小さいシートを何枚も重ねるより、行動中は薬用の小、幕営後は大判1枚と分けたほうが、枚数も荷重も収まりがいい。
ただし「幕営後に大判1枚で全身」が成り立つのは、暖かい日だけだ。稜線で気温が一桁の晩に上半身を裸にするのは現実的でないし、体を冷やせば本末転倒になる。寒い日は分割する。シュラフに入ってから上半身だけ服の中で拭き、服を戻してから下半身にかかる。肌が濡れている時間を短く刻めば、寒さはかなり抑えられる。そのうえで、行動着のまま寝ないこと。汗と皮脂を含んだシャツを着たままシュラフに入ると、拭いた意味の半分が消える。
使ったシートは全部持ち帰る|「分解される」は成り立たない
拭いたあとの始末は地味だが、ここを外すと全部が台無しになる。環境省が屋久島国立公園の記事で書いているとおり、ウェットティッシュはコットンや合成繊維の不織布で、水に溶けず、非常に分解されにくい構造だ。土に埋めても消えないし、山ではゴミは持ち帰るのがルールになっている。
問題は、使用済みのシートが水を含んで重く、自分の体から取ったものが染みていてニオうことだ。他の荷物と一緒にすれば、せっかく体から剥がしたものを、ザックの中で育て直すことになる。ジッパー袋を「使用済み専用」で1枚、独立して用意しておく。これだけで済む。
足と靴は別勘定|イソ吉草酸は、体を拭いても靴の中に残る
足は、体を拭く流れとは切り離して考えたほうがいい。理由は単純で、ニオイが育つ場所が皮膚ではなく靴の中だからだ。
汗と角質を菌が分解してできるイソ吉草酸は、靴の中というぬくもった密閉空間で育つ。足そのものを拭いても、菌と材料が残っている靴に足を戻せば、翌日また同じことが起きる。テント場で靴を脱いだ瞬間に前室がむわっとするのは、足ではなく靴のほうが溜め込んでいるからだ。
山行中にできることは限られる。夜に靴下を替え、中敷きを出して乾かし、靴の口を開けておく。ここまでだ。靴の中の菌に手を入れるのは、帰宅後の仕事になる。グランズレメディのように靴へ直接振り入れて数日置く粉は、この後始末のための道具だ。山には持っていかない。翌週の山行が、前の週の靴から始まらないようにするために使う。
靴下そのものの選び方は、素材の話なので別に整理してある。連泊で靴下を替えられないときに何を選ぶかは、こちらで比べた。
連泊のウェアと帽子|ポリエステルに菌が住みつくと、拭いても戻らない
体の側をどれだけ整えても、着ているものが先に負けていることがある。
ゲント大学のグループが2014年に報告した実験がある。運動後のシャツを集めて調べたところ、ポリエステルのシャツはコットンよりも強く不快なニオイを出し、そこにはミクロコッカスという菌がほぼ決まって住みついていたという。ここまでが報告された結果で、その理由は、水をはじく合成繊維が皮脂をつかまえやすいことで説明されることが多い。いずれにせよ、速乾性と引き換えに連泊ではここが弱点になる。
山でできる手当ては3つしかない。行動着のまま寝ない。夜に脱いだシャツはテント内に丸めず、前室かフライの下に吊るして風を通す。そして肌に直接触れる1枚だけは替えを持つ。上に着るものより、肌に触れる1枚のほうが先に負ける。
素材の側から手を入れるなら、連泊は化繊よりメリノが強い。連日着るベースレイヤーをメリノと化繊のどちらにするかは、こちらで整理した。
そして帽子だ。いちばん汗をかく頭に、連日いちばん長く接しているのに、替えを持つ人はまずいない。後頭部とうなじの話をしたばかりの場所に、洗っていない布が毎日当たっている。夜に外して風に当てる。それだけでも翌日の立ち上がりが違う。汗の多い人がウェアと装備をどう組み替えたかは汗っかきの装備を全部並べた記事にまとめてある。
香水や柔軟剤はクマを呼ぶのか|長野県の回答は「因果は確立していない」
香りの強いものを山で使うことについて、クマを心配する声がある。行政がこれをどう扱っているかは、はっきりしている。
2025年10月、長野県に「柔軟剤や香水などの香料がクマを引き寄せる可能性があるので注意喚起してほしい」という県民提案が出された。県の林務部が同月中に回答している。要点は2つに分かれていた。食べ物のにおいや生ゴミがクマを引き寄せることは、調査や事例から確認されている。一方で、香料製品とクマの接近を結ぶ科学的な根拠は現時点で確立しておらず、国内外の研究でも知見は限られている――そう明記したうえで、行政として動くにはさらに調査と検証が必要だと結んでいる。
持ち帰る判断はこうなる。香りつきのデオドラントを使うこと自体を怖がる根拠は、いまのところない。一方で食べ物のにおいには根拠があるので、デオドラントやシートを食料と同じ袋に入れるのはやめておく。行動として変わるのは、その一点だけだ。
まとめ:手持ちの道具を、5つの持ち場に割り振り直す
買い足すべきものは、実はそう多くない。空いている場所を見つけて、そこに軽いものを一つ置く。それだけで2泊目の夜が変わる。
| 持ち場 | 置くもの | タイミング |
|---|---|---|
| ワキ | 香りを足してよいならスティック、無香で済ませたい・汗が多いなら殺菌+制汗の医薬部外品。行動中は無香性の薬用シート | 朝の乾いた肌に。あとは汗をかいた区切りごと |
| 後頭部・うなじ | 薬用シートで生え際・耳の後ろ・うなじ。フードには手ぬぐいを1枚かませて毎日入れ替える | 寝る直前。手ぬぐいは朝に外して干す |
| 胸・背中(全身) | 大判のからだふきタオル1枚。使用済み専用のジッパー袋を1枚 | 幕営後 |
| 足・靴 | 山では替えの靴下と、中敷きを出して乾かす。靴の中の菌を叩くのは帰宅後の粉で | 毎晩/帰宅後に翌週ぶんのリセット |
| ウェア・帽子 | 連泊するなら素材で選ぶ。帽子は夜に外して風に当てる | 出発前の選択と、毎晩 |
ワキ用のスティックは、ワキに対しては設計どおりに働いている。効かなかったのではない。ワキに塗るものは、ワキにしか効かないというだけだ。2泊目に立ってくるニオイは、最初から別の場所でつくられている。
後頭部とうなじ、そして毎晩そこが触れる布。寝る直前に皮膚を拭いて、フードとのあいだに1枚かませる。40gの手ぬぐい1枚で、フードが受けるはずだった皮脂の行き先が変わる。
装備を足すより先に持ち物を見直したい人は、テント泊の荷物を全部広げて引き算する方法も合わせてどうぞ。