- Suunto Vertical 2とは何か:地図つきフラッグシップの「鮮やかさ」への振り直し
- スペック深掘り:何を捨て、何を取り、何を守ったか
- 正直に書く弱点:ここを承知で選ぶ
- 最近接ライバルとの一騎打ち
- 買い判断サマリー:どの素材を、どんな人が選ぶか
- よくある質問(FAQ)
- おわりに:見やすさを取って、電池を守った一台
※本記事にはアフィリエイト広告のリンクが含まれています。紹介リンク経由でのご購入により、当サイトは手数料を受け取ることがあります。
スント(Suunto)Vertical 2が、初代Verticalから捨てたものははっきりしている。ソーラー充電だ。代わりに手に入れたのが、1.5インチのAMOLEDディスプレイと、ケースに内蔵したLEDフラッシュライト。「太陽で充電して何十日も持つ」という初代の看板機能を外し、「鮮やかで、夜は手首が光る」方向へ舵を切った。
普通なら、AMOLEDを積めば電池は短くなる。ところがVertical 2は、デュアルバンドGPSでの公称バッテリーが65時間と、初代とまったく同じだ。ソーラー加算ぶんは消えたが、素の電池は削れていない。僕はまだ実機を通していないが、この「鮮やかさを取りながら電池を犠牲にしなかった」一点だけでも、Vertical 2が単なる色替えではないことが分かる。問題は、ソーラーを失った代償をどう見るか——そして、値下がりした初代をあえて選ぶ道も残っていることだ。
Suunto Vertical 2とは何か:地図つきフラッグシップの「鮮やかさ」への振り直し
スント(Suunto)は、フィンランド発のアウトドアウォッチブランドだ。Verticalは、フルオフライン地形図とデュアル周波数GPSを積んだ同社の山岳フラッグシップで、2023年の初代はその構成を「ソーラー充電+半透過のMIP液晶」で実現していた。直射日光下でくっきり読め、ソーラーで何十日も動く——電池の不安を設計から消すのが初代の思想だった。
2025年10月に出たVertical 2は、ここを選び直した。MIPをAMOLED(有機EL)に置き換え、ソーラーは廃止。さらにLEDフラッシュライトと刷新した心拍センサーを足し、処理速度も上げた。地図・GPS方式・32GBストレージ・49mmサイズは初代を踏襲しつつ、「見やすさと装備」に資源を寄せた世代だと捉えるのが正確だ。日本ではステンレスが99,000円、チタンが119,900円で並ぶ。
スペック深掘り:何を捨て、何を取り、何を守ったか
ソーラーを捨て、AMOLEDを取った:この世代最大の選択
搭載するのは1.5インチのLTPO AMOLED、解像度466×466、最大輝度2,000ニト。初代のMIP(280×280)とは別次元の精細さで、等高線が重なり合う地形図も、小さな文字も、とにかくくっきり見える。LTPOは表示内容に応じてリフレッシュ頻度を細かく落とせる方式で、AMOLEDの弱点だった電力消費をうまく抑える。
ただし、これはトレードオフの選択だ。初代の売りだったソーラー充電は、Vertical 2では全モデル非搭載になった。直射日光下の視認性そのものはAMOLEDの2,000ニトでカバーできるが、「日に当てて充電する」という初代の電池魔法は使えない。AMOLEDの鮮やかさと暗所の見やすさを取るか、ソーラーの超長期駆動を取るか——ここが世代を選ぶ最初の分岐点になる。
LEDフラッシュライト内蔵:白・赤・SOSを手首に
Vertical 2で新たに加わった実用装備が、ケースに内蔵したLEDフラッシュライトだ。白色光は4段階の明るさ、加えて暗順応を壊さない赤色光、そしてSOS点滅モードを持つ。テント場での夜間行動、地図確認、足元の確認、緊急時のシグナル——ヘッドランプを引っ張り出すほどでもない一瞬に、腕をかざすだけで光が届く。
ガーミンのfēnix系もLEDライトを持つが、Vertical 2のそれは白2灯+赤1灯という構成で、登山での夜の使い方をはっきり想定している。地味だが、山で「あってよかった」と感じる頻度が高い装備だ。
バッテリー:AMOLEDなのに、電池が削れていない理由
ここがVertical 2の一番の見どころだ。AMOLEDを積むと普通は電池が短くなるが、Vertical 2は主要モードで初代と同等以上を保っている。
| モード(公称) | Vertical 2 | 初代 Titanium Solar(参考) |
|---|---|---|
| スマートウォッチ(心拍ON) | 最大20日 | 30日(+ソーラーで60日) |
| デュアルバンドGPS(高精度) | 65時間 | 65時間(+ソーラーで90時間) |
| 単バンド全衛星(Endurance) | 75時間 | — |
| ツアー(省電力・2分ログ) | 250時間 | 500時間 |
注目すべきは、最高精度のデュアルバンドGPSが初代とまったく同じ65時間という点だ。LTPO AMOLEDの可変リフレッシュと電力設計で、画面を鮮やかにしながら測位の電池を削らずに済んでいる。GPS検証で定評あるDC Rainmakerも、「AMOLEDウォッチとして市場最良の電池持ちで、ガーミンのfēnix 8 Proを大きく上回る」と評価し、70kmのナビ+常時表示でデュアルバンドでも約2%/時の消費だったと報告している。2泊3日の縦走なら、高精度のまま充電を気にせず通せる水準だ。
一方で、見落とせない差もある。省電力のツアーモードは250時間で、これは初代の500時間(しかもソーラー加算あり)の半分だ。1週間を超えるような超長期縦走で「とにかく切れないこと」を最優先するなら、ソーラーつきの初代に依然として分がある。ここはあとで正直に扱う。
地図:無料フルオフライン地形図、ただし日本運用はGPX前提
地図はVertical系の核だ。Suuntoアプリ経由でWi-Fiから世界中の地形図を無料でダウンロードでき、32GBのストレージに抱えられる。等高線・ルートを重ね、明暗の地図スタイルを切り替えられる。登りの勾配と区間を色分けして示すClimb Guidance、コース外れの警告も備える。新しいプロセッサで地図描画も速くなった。
ただ、日本の登山で使うなら割り切りを2つ理解しておきたい。ひとつはYAMAPやヤマレコと直接連携しないこと。両アプリで作ったルートをGPXに書き出してSuuntoアプリ経由で取り込む運用が前提になる。もうひとつは、地図上に山名・山小屋名といった日本語の地物名がほとんど出ないこと。スント独自のグローバル地図は等高線や軌跡は鮮明だが、日本の市販登山地図のような注記の作り込みには及ばないと、複数の日本語レビューが指摘している。地形と現在地を腕で読む用途には十分だが、「山と高原地図をそのまま腕に」という世界ではない。
デュアルバンドGPSと、刷新された心拍センサー
測位はL1+L5のデュアルバンドGNSSで、GPS・GLONASS・Galileo・BeiDouに加え、日本の準天頂衛星みちびき(QZSS)に対応する。DC Rainmakerは山岳・樹林・テクニカルな区間でも「ぴたりと正確」と高く評価している。気圧高度計・コンパスのABCセンサーに加え、衛星が瞬断しても気圧と加速度から方位と標高を保つ仕組みも持つ。
光学心拍センサーは、初代で評価の低かった部分を新型に刷新した。定常域では実用的な精度に大きく改善したと評価が一致する一方、高強度のインターバルではまだわずかに乱れるという指摘も残る。心拍をトレーニングの核にするなら、胸ストラップの併用余地として捉えておくのが現実的だ。
素材とタフネス:サファイア・チタン/ステンレス・10気圧
レンズはサファイアクリスタル。ケースはステンレススチールとチタンの2素材で、重量はチタンで約74g、ステンレスで約87g(バンド構成により差がある)。49mmという大ぶりなサイズだが、チタンモデルなら見た目の迫力ほど手首に重さは残らない。100m(10気圧)防水、動作温度はマイナス20℃からと、山岳環境で必要な足腰はしっかり揃っている。
正直に書く弱点:ここを承知で選ぶ
- ソーラー廃止と、ツアーモードの短縮。 超長期縦走の「とにかく切れない」を最優先するなら、ツアー250時間は初代の500時間+ソーラーに負ける。AMOLEDと引き換えに手放した部分だ。
- オフライン再ルーティングがない。 道を外れたときに、本体だけで経路を計算し直す機能は持たない。案内は取り込んだルートをなぞる形が基本になる。
- 同期できるルート数に実質的な制限がある。 32GBのストレージがありながら、一度に同期できるルートは10本前後という指摘がある。
- エコシステムが弱い。 音楽再生なし、Suica等の非接触決済なし、ANT+センサー非対応(接続はBluetoothのみ)。日常のスマート機能まで一台に求めると物足りない。
- 日本語の地物名表示と、UIの手触り。 地図に山名・小屋名が出にくいほか、ボタンが固め・デジタルクラウンがない・純正充電端子が嵩張る、といった操作面の小さな不満も挙がる。
裏を返せば、これらに価値を置かず「鮮やかな地図と長い電池、夜のライト、フィンランド製の質感」を山で純粋に欲しい人にとっては、割り切りはむしろ歓迎すべき線引きになる。
最近接ライバルとの一騎打ち
初代 Vertical か、Vertical 2 か:値下がりした初代も有力
Vertical 2で最も悩ましいのが、実は他社機ではなく初代Verticalだ。Vertical 2の登場に合わせて初代は公式に値下げされ、ソーラー搭載のステンレスソーラーが¥88,000、無印ステンレスは7万円前後(¥69,850)まで下がった。これが効いてくる。
| 迷いどころ | Vertical 2 | 初代 Vertical(値下げ後) |
|---|---|---|
| ディスプレイ | AMOLED(鮮やか) | MIP(直射下で強い・地味) |
| LEDライト | 内蔵 | なし |
| 超長期電池(ソーラー) | なし | あり(ツアー500h・心拍OFFで最大1年) |
| デュアルバンドGPS | 65時間 | 65時間 |
| 実売 | ¥99,000〜 | ¥69,850〜 |
判断はきれいに割れる。鮮やかなAMOLED・LEDライト・新しい心拍センサーに価値を感じるならVertical 2、ソーラーの超長期駆動と価格の安さを取るなら値下がりした初代。デュアルバンドGPSの電池は同じなので、数日の山行ならどちらも実用は変わらない。初代の詳細はこちらのレビューにある。
vs ガーミン・COROS・Apple:地図つきAMOLEDという立ち位置
他社と並べると、Vertical 2の輪郭がはっきりする。ガーミンのfēnix 8もAMOLEDで地図を持つが、音楽・決済・自動再ルートを備える代わりに実売は十数万円と高い。COROS VERTIX 2Sは電池が桁違いに長いが画面はAMOLEDではない。Apple Watch Ultra 3は万能だがGPS連続記録の電池が短い。「無料の地形図つきで、AMOLEDの見やすさと数日の電池を、10万円前後で」という座標に、Vertical 2はうまく収まっている。縦走テント泊で上位機まで含めて比べるなら、4機種比較も合わせて読んでほしい。
買い判断サマリー:どの素材を、どんな人が選ぶか
Vertical 2が刺さる人
- 地図を腕で読むので、AMOLEDの鮮やかさ・見やすさを最優先したい人
- 夜間行動やテント場で、内蔵LEDライトを実用装備として使いたい人
- fēnix 8の十数万円は高い、でも無料地図と数日の電池を10万円前後で欲しい人
ステンレス(¥99,000)が向く人
価格を抑えつつVertical 2の中身を全部手に入れたい人。重量はチタンより重いが、機能はまったく同じだ。
チタン(¥119,900)が向く人
49mmの大ぶりなケースを少しでも軽くしたい人。チタンで約74gと、ステンレスより13g軽く、長時間装着での負担が減る。質感も上がる。
別の選択肢を考えるべき人
- 超長期縦走で「絶対に切れない」を最優先する人:ソーラーつきの値下がりした初代Verticalや、電池が桁違いに長いCOROS VERTIX系が向く
- 腕の上で日本詳細地形図(山名・小屋名つき)を使いたい人:地物名の作り込みならガーミン+日本詳細地形図に分がある
- 音楽・決済まで一台に求める人:エコシステムの広さならガーミンかApple Watch
よくある質問(FAQ)
Suunto Vertical 2にソーラー充電はある?
ない。Vertical 2は全モデルがソーラー非搭載だ。初代にあったTitanium Solarのソーラー路線は、AMOLED化と引き換えに廃止された。直射日光下の視認性はAMOLEDの2,000ニトでカバーするが、「太陽で充電して何十日も持たせる」という初代の電池魔法は使えない。ソーラーによる超長期駆動が欲しいなら、値下がりした初代Verticalが選択肢になる。
AMOLEDになって電池は短くなった?
主要モードでは短くなっていない。デュアルバンドGPSは初代と同じ65時間だ。LTPO AMOLEDの可変リフレッシュと電力設計で、画面を鮮やかにしつつ測位の電池を削らずに済んでいる。DC Rainmakerも「AMOLEDウォッチとして市場最良の電池持ち」と評価している。ただし省電力のツアーモードは250時間で、ソーラー込みの初代(500時間+)には及ばない。数日の山行なら差は出ないが、超長期縦走では初代が有利だ。
初代VerticalとVertical 2、どっちを買うべき?
鮮やかなAMOLED・LEDライト・新しい心拍センサーが欲しいならVertical 2、ソーラーの超長期駆動と安さを取るなら値下がりした初代だ。デュアルバンドGPSの電池は両方とも65時間で、数日の山行なら実用は変わらない。Vertical 2はステンレスで99,000円、初代はステンレスが7万円前後(¥69,850)・ソーラー搭載のステンレスソーラーでも¥88,000まで下がっている。見やすさと装備に2〜3万円を払えるかどうかが分かれ目になる。
日本の登山で地図はそのまま使える?
無料の地形図は本体に入るが、YAMAP・ヤマレコとの直接連携はなく、地図に山名・小屋名などの日本語地物名はほとんど出ない。両アプリで作ったルートをGPXに書き出してSuuntoアプリ経由で取り込めば、等高線つきの地図上に軌跡として表示できる。地形と現在地を腕で読む用途には十分だが、市販の日本詳細登山地図のような注記を求めるならガーミンが向く。
おわりに:見やすさを取って、電池を守った一台
地図つきのGPSウォッチでAMOLEDを積むと、たいてい電池が犠牲になる。Vertical 2はソーラーを手放す決断と引き換えに、デュアルバンドGPSの電池を初代と同じ65時間に保ったまま、鮮やかな画面とLEDライトを手に入れた。超長期の縦走で「とにかく切れないこと」を最優先するなら、ソーラーつきで値下がりした初代がいまも光る。でも、数日の山行で「地図がくっきり読めて、夜は手首が光って、電池も足りる」を10万円前後で求めるなら、Vertical 2はとても素直な答えになる。あとは、ステンレスの価格を取るか、チタンの軽さを取るかだ。