山道具ラボ by Daringdaddy

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LITEWAY URBAN PRO PACK ULTRA 30L ── ミニマリズムの極北で出会った、「素材そのものがかっこいい」という新しい答え

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30Lというサイズに、まだ答えが出ていない。

PaagoWorks Buddy 33からはじまった。容量は30Lより少し大きいが、ユニークな造形と、アーバンとトレイルを行き来できるデザインや汎用性に惹かれた。ただ、「素材への感動」がない。330Dナイロンは実用的だが、触っても「お、これは」とはならない。

次がExped Impulse 30。リサイクルナイロンにPUコーティング、パッドの入った腰ベルト、通気構造のバックパネル、ハイドレーション対応——いたれり尽くせりの30L。でも重い。1,010g。「ザックに1kgも使っていいのか」という問いが頭を離れなかった。

そのあいだに、Trail Bum Go-onを手に入れた。Ultra 200Xを採用した40〜48Lの国産ULパック。熊野古道3泊4日も奥多摩の氷点下テント泊も、これで行った。素材の保水しない感触、雨に濡れてもびくともしないUHMWPE繊維の表面——使えば使うほど「この素材、異常だ」という確信が強まっていった。

Go-onがあれば大容量はいい。問題は30Lだ。日帰りで、Go-onを引っ張り出すのは大げさすぎる。でも、Exped Impulseに戻る気にもなれない。Ultra 200Xを知ってしまった後では、あの1,010gの重さと、あの素材感のなさが、余計に気になる。

LITEWAYの記事を書くために調べていて、Urban Pro Pack ULTRAのBlackの写真を見たとき——手が止まった。

LITEWAY Urban Pro Pack Ultra 30L Black
画像引用: PLUGFLUX

LITEWAYと「Urban Pro Pack ULTRA」の立ち位置

LITEWAYについての詳細はブランド探訪記事に書いた。ウクライナ中部の工業都市クリヴィー・リーを拠点に、創業者Evgenが8年の試作と修正を経て2019年に立ち上げたULギアブランドだ。

Urban Pro Pack ULTRAは、LITEWAYのバックパックラインの中で「素材の天井」に位置するモデルだ。同じシルエット・同じ設計で、素材違いが3種類ある。

  • Ecopak EPX200版(455g): リサイクルポリエステル100%の環境系素材
  • UltraGrid版(400g): 産業廃棄物由来のリサイクルナイロングリッド
  • Ultra 200X版(378g): Challenge Sailclothが作るUHMWPE系最上位素材

Ultra 200X版だけBlackとWhiteの2色展開。あの質感が出せるのはこの素材ならではだ。

LITEWAYのラインナップを調べて、Urban Pro Pack ULTRAのBlackの写真を見たとき——「あの素材を、別の形で背負えるのか」と思った。

スペック深掘り ── 「Ultra 200X」という素材に偏愛する理由

Ultra 200Xとは何者か

正式名称はChallenge® Ultra 200X。素材メーカーはChallenge Outdoor(コネチカット州)。もともとヨットの帆布技術を持つChallenge Sailclothが、2020年頃からアウトドアギア向けに展開し始めた素材ラインだ。

組成は67% UHMWPE(超高分子量ポリエチレン)+ 33% Repreve再生ポリエステル。これにCrossPly補強0.75 milリサイクルフィルムバッキングが組み合わさる。

「Ultra 200X」の「X」はCrossPlylの意味だ。無印の「Ultra 200」(0.5 milフィルム、CrossPlyなし)からの強化版で、斜め方向の引張への対抗力と、フィルムの厚みから来る剛性・経年劣化耐性が底上げされている。

スペックで整理すると:

  • 重量:約132 g/m²(3.9 oz/yd²)
  • 引裂強度:縦103.1 lb / 横133.2 lb
  • 耐摩耗性:4,400サイクル(Taber試験)

これをDCF(ダイニーマ・コンポジット・ファブリック)と比べると面白いことになる。Challenge社自身のデータでは「DCFより3倍多いUHMWPEを含み、強度3倍・耐摩耗性7倍」とある。さらにDyneema素材全般との比較では「20%軽量で耐摩耗性4倍」という数字も出ている。

DCFは「軽くて強いが擦れに弱く、高い」という認識が定着している。Ultra 200Xはその「擦れに弱い」という致命的な弱点を撃ってきた素材だ。バックパックの底角、ベルトの付け根、フロントポケットのボトム——こういう局所的な摩擦ダメージが蓄積しやすい箇所でDCFは白化・剥離しやすいが、Ultra 200Xはそこで踏みとどまる。

Ultra 200X 素材テクスチャ クローズアップ
画像引用: PLUGFLUX

あの独特の表面テクスチャの正体もここにある。UHMWPE繊維がグリッド状に浮き上がり、バッキングフィルムの光沢と交差して生まれる、あのモコモコとした立体感。シルナイロンのツルッとした光沢とも、DCFのクシャッとしたドライ感とも違う。「素材がかっこいい」という理由でザックを選ぶことがあるとしたら、これはその数少ない正当なケースだと思う。

そしてBlackのカラーリング。このざらりとした黒の深さは、染色ではなく素材そのものの色から来ている。街を歩いていてもトレイルでも、圧倒的に映える。普通の黒いナイロンザックとは次元が違う。

ただし、シームは非シールド。メイン生地自体は防水だが、縫い目から水は入る可能性がある。「防水バックパック」ではなく「撥水バックパック」として理解する必要がある。本格的な雨のなかに長時間さらすならスタッフサックや軽量ライナーで内装を守る運用が現実的だ。

LITEWAY Urban Pro Pack Ultra 30L 背面
画像引用: PLUGFLUX

ミニマリズムの美学 ── 削ぎ落とすことへの熱量

Urban Pro Pack ULTRAを最初に目にして感じたのは、「余計なものが何もない」という感覚だった。

腰ベルトは着脱式で細い。背面パネルは通気構造ではなく、ただのメイン生地。チェストストラップは細く、位置調整はできてもパッドはない。Go-onで「これでいい」と学んだミニマリズムの哲学が、ここではさらに純化されている。

でも「何かを我慢している感じ」がしないのが不思議だ。余計なものがないのではなく、必要なものだけが最適な形で存在している——そういう印象がある。ロールトップとジッパーを組み合わせたメイン開口部の設計、フロントポケットの隠しジッパーの配置、背面スリーブの深さ。省略した理由が各所に見える。

ザックを「道具として背負う」のではなく、「身にまとう」感覚に近いかもしれない。

構造 ── フレームレスの哲学と12kgの矛盾

フレームレス、378g、最大積載12kg。

これは普通に矛盾している。フレームなしで12kgを背負えるというのは、何か別の工夫があるということだ。

LITEWAYの答えは2つある。

ひとつは「フレームは持ち込め」という設計。背面に着脱式のラップトップケースやフォームマットを挿入することで、必要なときだけ剛性を作れる構造になっている。ギアのスリーピングパッドを背面に当てれば即席フレームとして機能する。荷物が少ない日帰りはソフト、テント泊装備を入れる日はパッドを背面に回す——使い分けが内部に織り込まれている。

もうひとつは胴体長44cm・メイン室57×26×13cmという縦長・薄型のシルエット。横幅26cmは「無理に広げない」設計で、荷物の重心が背骨に近い位置に自然と乗る。フレームレスでもコアに近い位置に重さがあれば、肩と腰への分散は体で作れる。

ショルダーハーネスの上部間隔は意図的に短く設定されている。細身の体型・女性にもフィットしやすくするためだが、逆に肩幅が広めの人はここで若干詰まりを感じるかもしれない。

LITEWAY Urban Pro Pack Ultra 30L サイドビュー
画像引用: PLUGFLUX

ポケット構成と細部

  • メイン室:24L / ロールトップ+YKK AquaGuardジッパー
  • フロントポケット:3L伸縮エラスチック / 内側に隠しジッパーポケット付き
  • サイドポケット:左右各1.5L伸縮エラスチック / 1.5Lボトル対応
  • チェストストラップ:着脱・高さ調整可能
  • ヒップベルト:着脱可能(20mmバックル)
  • 背面ループ:スリーピングマット外付け対応
  • 外周コード:ギアのラッシング用

YKK AquaGuardジッパーの採用はこの価格帯では誠実な選択だ。普通のコイルジッパーとは明確に操作の引っかかり感が違う。

LITEWAY vs 30L ULパック ── 本当に比べるべき3本

見方:🌟が多いほど優れている(各項目5段階)

  LITEWAY Urban Pro Pack ULTRA 30L 山と道 MINI2 PaagoWorks FOCUS M Gossamer Gear Murmur 36
軽さ 🌟🌟🌟🌟🌟 🌟🌟🌟🌟🌟 🌟🌟🌟🌟 🌟🌟🌟🌟🌟
重量(本体) 378g 360g(Mサイズ) 520g 225g
岩・地面へのこすれ強さ 🌟🌟🌟🌟🌟 🌟🌟🌟 🌟🌟🌟🌟 🌟🌟🌟🌟
重い荷物の背負い心地 🌟🌟🌟 🌟🌟🌟 🌟🌟🌟🌟 🌟🌟🌟
雨・水への強さ 🌟🌟🌟 🌟🌟🌟 🌟🌟🌟🌟 🌟🌟🌟🌟
街〜山の汎用性 🌟🌟🌟🌟🌟 🌟🌟🌟🌟 🌟🌟🌟🌟🌟 🌟🌟🌟
見た目・素材感 🌟🌟🌟🌟🌟 🌟🌟🌟🌟 🌟🌟🌟 🌟🌟🌟
価格(税込) ¥47,300 ¥33,000 ¥27,500 約¥53,000

※雨への強さ:LITEWAYとMINI2はシーム非シールドで縫い目から浸水の可能性あり。FOCUS MとMurmur 36はより高い耐水性を持つ。

山と道 MINI2は近い重量帯での最大のライバルで、価格は¥14,300安い。MINI2の最新版はPertex 07RS-PCという伸縮ナイロン系素材で、ソフトで馴染みやすい反面、Ultra 200Xの剛性感・表面テクスチャの独特さはない。「素材に惚れている」ならLITEWAYの方に分がある。

PaagoWorks FOCUS Mは30L前後の汎用性で定評のある国産パック。Buddy 33の流れを汲む街〜山両用の設計で、30Lクラスの実用派として根強い支持がある。重さと価格のバランスで選ぶならFOCUS Mは有力だが、素材の感動はない。

Gossamer Gear Murmur 36はALUULA Graflyteという別系統のUL素材を採用した225gの超軽量パック。容量が36Lとやや大きく、構造はよりシンプル。重さの絶対値を優先するならMurmurは別格の選択肢だが、街使いの文脈ではUrban Pro Pack ULTRAの方が自然だ。

買い判断 ── 誰にとっての「これ」か

こんな人に刺さる

  • 日帰りから1泊程度の軽量ハイキングで、ザック自体の重さを削りたい人
  • フレームレスパックに馴染みがあり、荷物の詰め方で背負い心地を作れる人
  • Ultra 200Xの表面テクスチャと黒いカラーリングに、理屈抜きで惚れた人
  • LITEWAYというブランドの思想・背景ごと背負いたい人
  • 通勤・街歩き・ハイキングを1本のザックで完結させたい人

こんな人は別の選択肢を

  • 重い荷物(8kg超)を長時間担ぐ縦走が主な用途:フレームドパックの方が体への負担が少ない
  • しっかりした防水性が必要:シーム非シールドはレイン環境では不安が残る。別途ライナー運用を受け入れられない人には向かない
  • 山と道MINI2や国産ULパックのコスパ感に慣れている人:¥47,300という価格は国産競合より明確に高い

価格対価値の総評

¥47,300は、30L日帰りパックとして高い部類に入る。山と道MINI2(¥33,000)やTrail Bum Go-on(¥36,300)より明らかに高額だ。

ただし、この価格に含まれているのはUltra 200Xという素材だけではない。ウクライナで職人が手縫いで作り、売上の一部が戦時下の人道支援に回る——そういうブランドのポジショニングが、単純なスペック比較では出てこない価値として乗っている。

それをどう評価するかは人によるが、「意味のある買い物をしたい」という感覚と、このバックパックはよく合うと思う。

おわりに

Exped Impulse 30から始まった30L難民期が、まだ終わっていない。Go-onがあるから大容量はいい。ただ、Go-onで身体に染み込んだUltra 200Xへの偏愛が、逆に30Lの基準を上げてしまった。

Urban Pro Pack ULTRAのBlackを見ると、「次の30Lはこれで終わりにできるかもしれない」という感覚が確かにある。

素材を触りたい、という欲求がある。あのテクスチャを自分の背中に乗せて歩いてみたい、という欲求が。

それはそれで立派な理由だと思っている。

【速報】買ってしまった

……というわけで、買った。

記事を書いている途中で、気づいたら注文していた。「素材を触りたい」という欲求は、最終的にそういう形でしか解消されなかった。

LITEWAY URBAN PRO PACK ULTRA 30L ショルダーストラップとロールトップのディテール
到着直後。ショルダーストラップに刻まれたLITEWAYのロゴ。小さいのに主張がある。

実物を手に取った瞬間、まず重さに驚いた。387gという数字は知っていたはずなのに、手に持つと「これで30Lのパックなのか」という感覚が先に来る。Ultra 200Xの表面は、写真で見るより遥かにシャリッとしていて、触れるたびに「これは素材だ」という確信が強まる。

LITEWAY URBAN PRO PACK ULTRA 30L バックパネルとハーネスのディテール
V.B.P.バックパネルを装着した状態。メッシュとUltra 200Xが接するラインに、このパックの設計思想が凝縮されている。

写真はモンベルのV.B.P.バックパネルを装着した状態。ハーネスのメッシュはしっかりとした厚みがあり、フレームレスにしては背面のホールド感が想定より強い。縫製のピッチも均一で、「職人が手縫いで作った」という触れ込みは、実際に見ると説得力がある。

詳しい使用感は、実際に山と街で使い込んでから改めてレポートする。日帰りハイキング、通勤、1泊のファストパッキング——それぞれのシーンでこのパックがどう機能するか、正直に書いていく予定だ。

使用レビューは近日公開予定。楽しみにしていてほしい。

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