上高地〜涸沢カールを親子でトレッキング計画

以前に北岳・燧ヶ岳をテント泊登山した息子(小5)と娘(小2)を連れて、9月の連休をつかってテント泊登山をすることに。子どもとの山は計画7割、あとは当日の体力と機嫌次第、という認識を持ってから少し楽になった。
当初は鳳凰三山を予定していたものの、天候がすぐれず、またテント場が小さく宿泊事情が読めなかったため、直前に別の行き先を探すことに。子ども二人を連れて混雑した山小屋は避けたい。山小屋の布団をめぐる大人たちの争いに小学生を巻き込むのは、さすがに気が引ける。
で、以前から行ってみたかった涸沢カールに行くことにした。
上高地はマイカー規制があるので、沢渡駐車場に前泊して翌朝一番のバスで入るという計画。登山といいつつ山頂には行かない行程で、一応涸沢から行きやすいピークがないか探したが、前穂高・奥穂高・涸沢岳どれも小2には上乗せ不可能だった(そりゃそうだ)。幸い天気予報は良好。これだけで勝ち確みたいなもんだ。
涸沢カールは小学生にも登れるの?
結論から言うと、小2でも問題なく登れる。ただし距離と時間に覚悟が必要。
上高地バスターミナルから涸沢まで、大人の足で片道約6〜7時間。距離にして16km弱、累積標高差は約800m。体力的には「きつい」というより「長い」という感じで、難所らしい難所は本谷橋を過ぎた先の岩場くらい。ガレた斜面を登るので足元はしっかりしたトレッキングシューズが必須だが、鎖場もなく危険箇所はほぼない。
子連れで気をつけたいのは補給タイミング。横尾山荘まではほぼ平坦な林道歩きで気が緩みやすく、子どもは「まだ疲れてない」と言いながら実はじわじわ消耗している。横尾でしっかり食べさせることと、本谷橋で一本取ることを守れば、あとはカールが見えてからの「わあ!」という顔で一気に駆け上がってくれる。
小学生を連れてのテント泊登山の準備
自分は自身のことをまったく信じていないので、必ずリストで持ち物を管理する。リストをつくらないと安心できない性分だ。参考までに親子テント泊登山の持ち物リストを共有する。9月連休を想定したもの。個別の製品名が入っているのはご愛敬。
前泊
自宅から沢渡まで車で移動。上高地はマイカー規制があるため、沢渡のいずれかの駐車場に停めてバスに乗り換えるのがルールだ。沢渡第2駐車場(市営)は24時間営業で1日700円、バスターミナルまで歩いて数分というアクセスの良さ。ここに車を停めて一泊。
駐車場の隣に足湯がある。子どもたちがすぐ見つけて「入る入る!」と脱靴開始。翌日16km歩くことが決まっているのに、前日の夕方から足をジンジンとほぐす謎の調整をする二人。ま、楽しそうならいい。

近くの食堂で夕飯を食べ、車中泊。翌朝5時台のバスに乗るため4時半起床の予定を組んだが、当然子どもたちは寝坊した。
1日目
上高地バスターミナル〜明神〜徳沢〜横尾(ハイキング)
バスで上高地バスターミナルに到着。大正池から歩く選択肢もあるが、子連れの場合は体力を温存してバスターミナルスタートが無難だ。朝の上高地は空気が冷たく、澄んでいる。焼岳がドンと構えて迎えてくれた。河童橋から穂高連峰を眺め、小2の娘が「すごい…」と小さく言った。その顔を見るためだけでもここに来た意味があると思った。


バスターミナルから横尾山荘まで約10km、ほぼ完全フラットな林道歩き。明神、徳沢と通過するたびにカフェや売店があるので、補給の心配はほとんどない。徳沢のソフトクリームは定番で、子どもたちはここで必ず一本要求してくる。前泊から今日だけで計3本目のアイスだったが、「それが山の正しい使い方だ」という気持ちになってきた。


横尾山荘で昼食休憩。ここから涸沢まで本番開始。横尾大橋を渡ると、いきなり雰囲気が変わる。
横尾〜本谷橋〜涸沢
横尾から本谷橋まではゆるやかな上りが続く。樹林帯の中を歩くため直射日光は当たらないが、累積疲労がじわじわくる区間。長男は黙々と歩いていたが、小2の娘は「あとどれくらい?」を10分おきに繰り返し始め、こちらの精神的体力も削られてくる。「本谷橋まで行ったら涸沢、すぐだから」という嘘をついて乗り切った。ごめん。


本谷橋で大休憩。橋の下の清流で顔を洗い、ここで持参のゼリーとおにぎりを全員完食。この補給が後半の命綱になる。本谷橋から先はガレ場の急登に変わり、子どもの足では歩幅の問題でじわじわ体力を使う。


そして、稜線の奥に涸沢カールが姿を現す瞬間が来た。
緑の急斜面が両側から迫り、その先に穂高の岩壁がドンと立ちはだかっている。岩と緑と空。そこに何百というカラフルなテントが張り付いている。娘の「あとどれくらい?」がこの瞬間だけはぴたりと止まった。「わあ」という声が出て、そのまましばらく黙って見ていた。そういう子どもの顔を見るために、また来ることになる。




涸沢でテント泊
涸沢ヒュッテのテント場に到着。9月の連休ということもあって、すでにカラフルなテントが斜面を埋め尽くしていた。

岩ゴロのテント場にスペースを見つけてテントを張り、小屋のテラスでカレーを注文。小2にとって「自分で歩いて稼いだカレー」の味は格別らしく、普段は途中で残すのに完食した。

日が落ちてから外に出ると、テント場の景色が昼と別物になっていた。無数のテントの中からライトが漏れて、暗闇の斜面に宝石を撒いたような光の群れ。子どもたちは「うわ、きれい」と言って写真を撮っていた。夜の気温は一桁台まで下がり、ダウンジャケットを着込んでもじっとしていると寒い。子どもたちは早々に寝袋に転がり込んだまま朝まで爆睡していた。

2日目
涸沢〜横尾〜上高地
朝4時半に目が覚めた。テントの外に出ると、空はすでに薄明るくなっていて、雲が低く垂れ込めていた。晴れではないが雨でもない。

テント場はまだテントだらけで、あちこちで撤収準備を始めている人たちのヘッドライトがちかちかしていた。子どもたちを起こし、軽く食事を済ませて下山開始。

下りは子どもにとって膝に来る。長男は黙々と降りたが、娘は横尾を過ぎてから「足が痛い」モードに入った。ここで用意していた飴とチョコで機嫌を回復させながら、一定ペースを維持。徳沢でアイス休憩(本日1本目)、明神で小休憩をはさみ、なんとか上高地バスターミナルに帰着。



下山〜帰宅
沢渡でバスを降り、駐車場に戻る。温泉に寄ってから帰宅する気満々だったが、子どもたちが車に乗り込んだ瞬間に二人とも即落ち。温泉は却下になった。
帰りの高速で、後部座席から娘の寝言が聞こえた。「またいく」。
来年また来よう。次は少し長く歩けるはず。